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私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月27日は、2011年、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」が初収録されたさくら学院1stアルバムが発売され、2014年、さくら学院が「桜を見る会」に招待されて、水野由結と菊地最愛が安倍首相と写真に納まり、2017年には、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、フロリダ州タンパのAmalie Arenaに出演した日DEATH。

10 BABYMETAL BUDOKANの考察が終わったので、中断していたAnother 10 Years~10年間のBABYMETAL名場面のセレクトに戻っていこう。

<2015年(2)>
●2015年8月29日:SU-METAL「Listen, Listen, Listen!」
Reading Festival 2015@イギリスRichfield Avenue(推定80,000人)
<セットリスト 5曲>
1. BABYMETAL DEATH
2. メギツネ
3. Road of Resistance
4. ギミチョコ!
5. イジメ、ダメ、ゼッタイ

2015年6月、Kerrang! AwardsとMETAL HAMMER GOLDEN GODS Awardsをダブル受賞して帰国したBABYMETALは、6月21日に巨大天下一メタル武道会@幕張メッセ、8月15-16日にSummer Sonic 2015幕張&大阪舞洲に出演し、8月20-21日にはThe One会員限定のApocrypha Red Mass Ⅱ&Black Mass Ⅱ@TSUTAYA O-EASTを行ってから、また機上の人となって空路ドイツに渡った。
8月26日にドイツ・フランクフルト公演@Batschkapp、翌27日には首都ベルリン公演@Huxleysを行い、続いてドーバー海峡を渡って、8月29-30日のReading & Leeds フェスティバルに臨んだ。
レディングフェスティバルといえば、1970年代から本場イギリスの音楽フェスの代名詞であり、1982年に出演したBOWWOWが世界的バンドの仲間入りをしたとみなされたほど、日本人としては出演すること自体に価値あるフェスである。
1999年以降、レディングとリーズの2都市で開催されるようになり、それが日本のサマーソニックのモデルにもなっている。
2015年のBABYMETAL出演は、BOWWOW(1982年、1987年VOWWOW名義)、少年ナイフ(1992年)、コーネリアス(1999年)、The 5.6.7.8's(2004年)、Crossfaith (2013年、2014年、2016年)に続いて、日本人としては6バンド目。
前年のSonisphereでは6万人のメタルヘッズがBABYMETALに熱狂したが、レディングではそれを上回る8万人がBABYMETALの出番に詰めかけた。
短いフェス用セトリの中で、「Catch Me If You Can」に代わって「Road of Resistance」が入ったため、イギリス人ファンには、ビザールなイメージのあったBABYMETALが、よりパワーメタル色を強めたように見えたかもしれない。
フィニッシュ曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が終わり、「We are?」「BABYMETAL」のコール&レスポンスも終わったあと、SU-が「Listen、Listen、Listen! Did you hear?」と観客席に話しかけた。
観客は訳が分からず、「Yeah!」と歓声を上げる。するとYUIが「BABYMETAL coming back…」と続け、MOAが「to the UK, next year. 」とつなげた。
大歓声が上がる中、最後にもう一度SU-が「Come see us at Wembley Arena on April in 2016!」とシメると、観客は大歓声で応えた。
前日、Wembley Arena公演が決まり、ネットで速報が流れていたが、それを改めてレディングフェスティバルの会場で告知したわけである。
ただ出演するだけでなく、ロンドンで翌年行う大規模単独公演の告知を行う。
ここに、欧米の音楽市場を主戦場にしようとするBABYMETALの腰の据わった気概が現れていた。

●2015年12月13日:「THE ONE」
Final Chapter of Trilogy@横浜アリーナ二日目(収容17,000人)

<セットリスト 16曲>
1. BABYMETAL DEATH
2. ギミチョコ!
3. いいね!
4. あわだまフィーバー
5. Catch Me If You Can
6. ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
7. ド・キ・ド・キ☆モーニング
8. 悪夢の輪舞曲
9. おねだり大作戦
10. KARATE
11. ヤバッ!
12. メギツネ
13. イジメ、ダメ、ゼッタイ
14. ヘドバンギャー‼
15. Road of Resistance
16. THE ONE

横浜アリーナ公演は、2015年1月の新春キツネ祭り、6月の巨大天下一メタル武道会に続く国内大規模会場ライブTrilogy(三部作)のThe Final Chapter(最終章)とされていた。
その意味は、開演前にはよくわからなかったが、二日目終演後にその壮大な仕掛けが、メイトを狂喜乱舞させることになる。
初日、場内に入った観客は3つの巨大なキツネの頭部像に驚かされた。真ん中のキツネが一回り大きいので、これは下手から上手へYUI、SU-、MOAを表現しているのだということがわかった。
メキシコシティを皮切りに、日本国内のZeppツアーを含めて、10か国を巡る「海外2年目」の活躍は、往年の日本人アーティストの「海外挑戦」を軽々と超える継続性や動員力をすでに実現しており、マスメディアでもたびたび報じられた。
10月には国内でも『GQ Japan』誌のMen of The Year特別賞ディスカバリー賞、『Vogue Japon』誌のWomen of the Year 2015を受賞し、BABYMETALは「時の人」になっていた。
その授賞式の写真では、もともと“プニプニほっぺ”がトレードマークだったYUIMETALが「激やせ」したように見えたため、ファンの間には大活躍を讃える一方、健康面を心配する声もあった。
そんな中、2015年を締めくくる大規模ライブがThe Final Chapter of Trilogy@横アリだったわけだ。
ライブ初日は、いきなり聴いたことのない新曲、三拍子系のプログレメタルで始まった。
例によって初披露の新曲はタイトル名が発表されなかったので、ファンの間では「三拍子の曲(仮)」と呼ばれることもあったが、動画サイトにファンカムが上がると、サビの歌詞から「THE ONE(仮)でいんじゃね」と言われた。
4曲目には、巨大天下一メタル武道会で初披露されていた「あわ玉フィーバー」が入り、10曲目はまたも新曲で、「紙芝居」には松岡修造と思しき人物が真っ赤に燃え上がるイラストが映し出された。
ヘヴィなグルーヴ・メタルの曲調とともに三人がダンスとしての正拳突き、手刀などのポーズをするこの曲は「Kungfu Song(仮)」「松岡修造(仮)」などと呼ばれた。これがのちの「KARATE」である。
二日目。セトリはオーソドックスに「BABYMETAL DEATH」から始まり、新曲「あわ玉フィーバー」「KARATE」を含み、初日「4の歌」の代わりに「おねだり大作戦」が披露されるなど順調に進み、ライブ終盤は13曲目「イジメ、ダメ、ゼッタイ」~14曲目「ヘドバンギャー!!」~15曲目「Road of Resistance」と来たので、通常ならこれでフィニッシュとなるはずだった。


しかし、この日は違った。
壮大なオーケストラのプレリュードに続いて、神バンドによるイントロが始まると、3頭の巨大キツネ像が白いスモークを吐き、その上から赤いピラミッド状のゴンドラに乗った三人が現れた。
「♪No reason why, I can‘t understand it. Believe it now, we can understand it…」(Jaytc意訳:理由もなく、私はそれを理解することはできない。でも信じさえすれば、私たちはそれを理解することができる)という歌詞は、なぜ2010年代の日本のアイドル界にBABYMETALという特異なユニットが生まれ、そして彼女たちが欧米で大人気になったという歴史的事実の不可思議さを表現していた。
すべてはキツネ様のお導き―。ぼくらはこういう言い方で、その不思議さを言い表す。
だがそれでは「単なる偶然」と言っているに等しい。そうではなく、この「BABYMETAL現象」(Copyright© by NHK)には、2010年代から現在の日本や世界の音楽市場やネットインフラの広がり、人々の価値観の変化・多様化など、さまざまな政治的社会的な背景が作用しているに違いない。
「アイドルとメタルの融合」というKOBAMETALの思いつきがいかに卓抜で、アミューズ社の楽曲制作スタッフがいかに優秀でも、他でもないBABYMETAL「だけ」がこれほど世界で人気になり、各種の表彰を受けるほどになったのは、なぜなのか。
結局このブログも、その疑問にぼくなりに挑戦しているというだけだ。
その詮索を、「信じれば救われる」というこの歌詞は、軽々と超える。
これは宗教のやり口だ。そして、それこそ万古普遍の訴求方法である。
ゴンドラは、そのまま観客席の上の空中を飛んでいく。
「♪We are THE ONE, together we the ONLY ONE」「♪You are THE ONE, remember you’re the ONLY ONE」と繰り返すSU-の歌唱力は冴えわたっており、2014年の『BABYMETAL現象』の中で語られた「Only OneのBABYMETALというジャンルを創りたいんです」という言葉が、強烈な説得力を以て、見上げる観客の上から降り注いだ。ゆっくりと観客の上を飛ぶ三人は、本当に天空の住人=女神に見えた。
恒例の「We are?」「BABYMETAL!」というC&Rなしに、曲の終わりと共にゴンドラが消えると、スクリーンには、まず、「キツネ様のお告げ」として、翌年2016年4月1日FOX DAYに第二大教典=2ndアルバムがリリースされること、さらに4月2日にロンドン・Wembley Arenaで2016年ワールドツアーのキックオフライブが行われることが告知され、その都度、観客席は大歓声を上げた。
続いて、スクリーンには新春キツネ祭りが行われたさいたまスーパーアリーナ、巨大天下一メタル武道会が行われた幕張メッセ、The Final Chapter of Trilogyが行われた横アリの3点を結ぶ巨大な三角形が描かれた。何事かと思ってみていると、その中心点に焦点が当たってそのままズームアップしていき、2016年ワールドツアーの最終日に、東京ドーム公演を行うことが宣言された。
初東京ドーム公演発表の瞬間は、グループを問わず、マイナーだった頃から追っかけてきたアイドルファンなら誰しもその場に居合わせることを夢見る。
BABYMETALファンにとっては、その瞬間こそ、2015年12月13日だった。
(つづく)