浅川さんが長期間お休みの為、友梨奈がその穴埋めで連日、朝から夜まで仕事になってしまい、早く起きて仕事に行って夜は私のご飯を食べてすぐにお風呂に入って寝てしまうことが多くなってしまった。


「友梨奈、大丈夫?」

「うん大丈夫...」


布団の中で私の服を握ってすぐに眠りについた友梨奈をぎゅっと優しく抱きしめて私も眠りについた。






朝起きると友梨奈はもういなくて、私も身支度を整えて仕事へと向かう。


「先輩ー!」


聞き慣れた声に後ろを振り向くと後輩の尾関がパタパタと独特な走り方をして私に駆け寄ってきた。


それにはいつも笑ってしまう。


「先輩!今日早いですね!」

「うん。ねぇおぜ、その走り方どうにかならないの?」

「だって直せないんですもん」

「まぁ可愛いからいいけど」

「先輩ー!」


私の腕をぎゅっと抱きしめてぶんぶんと振るわせられると周囲の注目を浴びて尾関の頭を押して離れさせた。


それでも友梨奈のことが気になって、心配で俯いて歩く。


それに気付いた尾関が顔を覗き込んできた。


「なんか最近先輩元気ないですよ?」

「そう...?」

「はいっ。いつも見てますから」

「えっ?見られてたの?私」

「そうですよ?ここのところ心ここにあらずって感じで」

「...そう」


パンプスを眺めながら歩く。


だって、友梨奈が心配で。なんて誰にも言えやしない。


「彼氏さんのことですか?」

「!?」

「やっぱりー」

「なんでおぜ...っ」

「見ちゃったんですよ、先輩の携帯」

「どこで見たの!?」

「先輩が画面触った時、後ろから。彼氏さん金髪なんですねっ」

「〜っ」


見られてたなんて!!


尾関を置いて小走りで走り出した。


恥ずかしくて頬を真っ赤にさせながら、背後から尾関が先輩ーと呼ぶが急いで会社へと向かう。


...恥ずかしい...?


思わず友梨奈の笑顔が脳裏によぎって足が止まった。


...恥ずかしくなんてない。


友梨奈は彼氏じゃないけど、私の大切な彼女。


エロガキで、クソガキで。


私は自分が自分で嫌になった。


友梨奈は私の為に仕事をして頑張ってる。


それをただ画面を見られただけで恥ずかしいなんて。


自然と涙が頬を伝っていた。


「先輩...?」


追いついてきた尾関が私の涙を見て眉を下げて見上げる。


私は涙を拭いて尾関に微笑んだ。


「すみません...余計なこと言っちゃって」

「...ううん、大丈夫。それよりおぜあとでコーヒー奢ってね?」

「えー。...でも、理佐先輩を泣かせちゃったから奢ります!」

「よろしい。ほら、会社行くよっ」

「はいっ」


尾関と共に会社へと向かって歩いた。













ーーーーーー

いつも通りに定時で上がって帰路に就き、コンビニで友梨奈の好きなアイスとジュースと自分が食べる物を買って自宅のエントランスに着くと鍵が開いているのに気付き、施錠してパンプスを脱ぐと廊下を歩いて「ただいまー」と声を上げるが返事が返ってこない。


疲れて寝ちゃってるのかな。


なんて扉を開けると床で友梨奈が倒れていた。


一瞬何が起こったのか分からずにいると友梨奈が目を覚まして私を見上げる。


「...おかえり...理佐...」


力なく笑ってまたぐったりとそのまま目を閉じた。


コンビニの袋と鞄を床に落として慌てて友梨奈を抱き抱える。


「友梨奈!目開けてっ!」


それでも目を開けない友梨奈を抱きしめて何度も名前を呼ぶ。


すると友梨奈が目を開けて、


「理佐...大袈裟...」


と、ふふっと笑った。


とりあえず抱き上げてベッドに運んで寝かせると電気を点けて心配で涙を流す。


「友梨奈...っ、友梨奈...っ」


青白い肌をした友梨奈の頬を親指で撫でてベッド傍に顔を埋めた。


「理佐...」


名前を呼ばれても顔を上げずにぎゅっとシーツを握って肩を揺らし、しゃくり上げて泣くと代わりに髪を撫でられて余計に涙が溢れる。


「なんでこんなになるまで頑張るの...っ」

「だって...浅川さんと私と店長だけだもん...」

「でもっ、体調崩してまで働いて、ばかっ」

「理佐...」

「友梨奈のばかっ、ばかっ」

「ばかって3回言った...ほら、顔上げて...?」


そう言われて泣き腫らした顔を上げると瞼を閉じる目は遅いけどしっかりと私を見つめて微笑んでいた。


「理佐がちゅーしてくれたら治る...」

「なにばかなこと言ってんの...っ」

「あ...4回目...」


首を引き寄せられて唇が重なる。


「友梨奈...っ」

「...泣き虫理佐...」


親指で涙を拭われて鼻を啜った。


「...なにか食べる...?」

「理佐の梅がゆ...」

「...あっ」


友梨奈から離れてコンビニ袋と鞄を寝室に持ってきてアイスとスプーンを渡す。


「好きなアイスだ」

「友梨奈の為に買ってきたんだよ。食べれそう?」

「うん」


友梨奈の身体をゆっくり持ち上げて枕二つを背もたれ代わりにして横たわせると友梨奈はフタを開けてスプーンとアイスのビニールを捲ってアイスを頬張った。


「ん...おいひ...」

「良かった...」

「理佐も、あーん」

「あー...ん、美味しい...」

「...あー死ぬかと思った...忙しすぎて」

「なんで床に倒れてたの...」

「ベッドまで行く気力がもう無くて床に倒れた」

「もうっ!心配したじゃない!ばか友梨奈っ」

「はい5回目。理佐食べさせて」

「自分で食べてたじゃない」

「5回もばかって言ったから。はい、理佐」


有無も言わさずにアイスを渡されて仕方がないから雛鳥のように口を開ける友梨奈を見て、眉を下げて微笑んでベッドに座ると友梨奈の口にアイスを入れた。


「明日も仕事?」

「んん。浅川さん明日から出勤するから店長が2日休みくれた」

「土日じゃない!やった、友梨奈といられるっ」

「うん。理佐アイス」

「はいっ」

「んんっ!ひれふひっ」

「ん?あ、ごめん」


アイスを食べさせ終え、部屋着に着替えていると視線を感じて振り向き、友梨奈がニヤッと笑う。


「このエロガキッ」

「何にもしてないのにエロガキって酷くない?」


...でもいっか。


友梨奈が元気になってさえくれれば。




「理佐、梅がゆ作って?」

「はいはい」

「はいは一回」

「はい。ほら、ベッドに横になって?」

「うん」


素直に横になった友梨奈に微笑むと梅がゆを作り、友梨奈を介抱した私だった。













私にとって大事な彼女だからね。

















ーーーーーー

リクエストして下さった方、ずいぶんと遅くなってしまい申し訳ありません🙇‍♀️

気に入ってくださると幸いです。

お読み下さり、ありがとうございました。