小林「てち、聴き間違えたかもしんないからもう一回言って欲しいんだけど?」


平手「だからパスするより私が直接決めた方はやいって言ったの」


小林「3on3でやってるんだよ?個人プレーする練習じゃないんだけど?」 


平手「絶対に外さないと思ったからうった。ただそれだけ。別に個人プレーをしたつもりはないよ」


いま言い合いをしてるのは1年の平手友梨奈と2年の小林由依。


3on3形式で練習をしている際、マークがきっちりついていたにも関わらず、無理矢理シュートをうったことで、由依の怒りに触れたみたい。 



私は正直 平手友梨奈が苦手だ。


練習は真面目にやっている。けどこうやってたまに誰かと衝突する。 


先輩にタメ口だし。。笑


菅井「はい、そこ!いちいち喧嘩しない!」


小林「てちの個人プレーが酷かっただけですよ。先輩として注意しただけです」


平手「別に喧嘩してない。こばが難癖つけてきただけ」


小林「おい、キャプテンには敬語使えって。私になら別にいいけどキャプテンに対してその態度は流石にあんたでも許せないよ?」


菅井「由依、いいよ!……てち?私達はチームメイト。それは分かってるでしょ?」


平手「……はい」


由依と平手さんはしょっちゅう喧嘩をして、いつもキャプテンに止められてる。
怒られていても納得してないだろうなってことは顔を見ればわかる。本当生意気なんだから。。





菅井「じゃあ二人共、練習戻っていいよ」



数分続いた二人への小言が終わるとそう言ってキャプテンは練習に戻っていく。


その後、平手さんと由依は数秒睨み合ったあと練習に戻っていった。








小林「ったく平手め。私まで注意されんだから」


部活が終わり、下校途中に由依は愚痴をこぼした


理佐「まぁまぁ。由依も怒ると口が悪いからさ……」


小林「納得いかーん! あの生意気な小娘!」


理佐「一個しか変わんないでしょ。でもあの子 性格はともかくすごいよね。1年のうちからもうレギュラーはほぼ決定なんでしょ?」


小林「むかつくけどめっちゃくちゃ上手いから仕方ないよ。けどそれだけじゃないんだよね……」


理佐「それだけじゃないって?」


小林「あいつさ……「あ、わすれものしちゃった!」」


小林「え、なに。なに忘れたの?」


理佐「宿題!明日までなの!とってくるから先帰っていいよ!」


小林「あ、うん。わかったー 気をつけてねー」




「ふー。危なかったぁ。完全に忘れてた……ん?」

宿題をとり、帰ろうとすると体育館に明かりがついてる。おかしいな。鍵閉めて返しにいったはずなのに……


体育館に近づくとバッシュのスキール音が聞こえる

誰か練習してる?

そう思って体育館を覗いてみた。


平手「はぁはぁ……ふぅー」



先ほど由依ともめてた1年の平手友梨奈がいた。

あれだけの練習をしたあと、1人で居残り練習してるのか…… すごい体力だなぁ


平手「……なんですか?」

感心してみていると平手さんに気づかれた。


理佐「あ、いや。たまたま通っただけ」


平手「そうですか。ならさっさと帰ってください。暗くなってるし危ないですよ」


一瞬言い方にむかっとしたけど、平手さんなりの心配みたい。


理佐「それをいうなら平手さんもでしょ」


平手「私は練習がありますから。それに私はもう少しやったら帰りますよ」


それだけいうと練習を再開した。


このまま帰ろうとおもったのだが、なぜか平手さんともう少し話してみたいと思い、とりあえずその辺に座って練習風景を見ていた。


平手「……え、なんですか?」

理佐「別に。見てるだけ。続けていいよ」

平手「はぁ」


改めて動きを見てみるとほとんど動きに無駄がない。

多彩なドリブル。

綺麗なシュートフォーム

ドリブルからシュートまで流れるようにスムーズだ。

 

一通り練習していると平手さんが駆け寄ってきた。


平手「送りますよ」


理佐「え?」


平手「夜。危ないでしょ。だから送ります」


理佐「え。でも平手さんも同じじゃ……」


平手「私はこの時間帰るのが常なんで。それに私に危害加える人なんていませんから」


理佐「え、わかんないじゃん。そんなこと言ったら私も大丈夫だよ」



平手「理佐先輩。時として謙遜は相手を傷つけますよ。とにかく送らせてください」



私がいつ謙遜したのかわからないけどあまりにも詰め寄って言うものだから送ってもらうことにした。



「平手さんはいつ頃からバスケしてたの?」


「小学4年の時です。兄がnba好きで、私がたまたまみた試合が好きでそこから……」



「誰か好きな選手はいるの?」


「当時はアイバーソンが好きでした。あのクロスオーバーに憧れましたよ」


「だからクロスオーバーを使うことが多いんだね」


「まぁ単純に使い勝手がいいってのはありますけどね」


「他にはいないの?」


「そうですね。レナードが好きです」


「その人はどんな選手なの?」


「攻守両方に優れた選手です。先を読んでるかのようなディフェンスはどんなスコアラーにとっても厄介だと思います。どんなプレイヤーにも得手不得手があるし、無かったとしてもある程度優劣があるはずです。けどレナードはどっちも同じくらい高いレベルの能力を持ってます。理想形ですね」



驚いた。普段あまり話さないから無口なのかと思ったけど


送ってくれるし、バスケのことになるとものすごく饒舌だ。


顔が緩んでニヤニヤしながら話してるの気付いてるのかな?


「平手さん。楽しそうに話すね」


「……ゴホン。すいません。つい」


一度咳をすると元の無表情の顔に戻ってしまった


「いやぁこんなに喋る子だったんだね」


「どんなふうに思ってたんですか」


「あんまり笑わないし話さないから」


「練習中ですよ?真面目にやってたら笑ってる暇ないですよ。結構きついし」


無口 無愛想だと思ってたけどただ真面目なだけみたい。 


澄ました顔で練習中してるのに内心では他の子たちと同じできついと感じてる

そう思ったらつい吹き出してしまった。


「何笑ってんですか?」


「なんでもないよー。あ、そうだ平手さん」


「なんですか?」


「明日お弁当作ってきてあげようか?」


「え、なんでですか?」


「んーーいつも頑張ってるから?」


「なら皆にも作ってこないとですね」


「私 疲労で休んじゃうよ?とにかく平手さんに作ってあげたくなっただけ。迷惑だった?」


「いや。突然何言い出すのかと思ったらお弁当作ってあげるなんて言うからびっくりして……まぁくれるならもらいます」


「もっと嬉しそうにしなよ。先輩が作ってあげるんって言ってんだぞー?」


「これはハラスメントですか?」


「なんでよ!?」


その後も他愛もない話をして一緒に帰り、折角なので家付近まで送ってもらった。


「ここまでで大丈夫だよ。もうすぐそこだから」


「そうなんですね。じゃあこれで失礼します。お疲れ様でした」


「うん。お疲れ。あ、そうだ」


「今度はなんですか?」


「また一緒に帰ろうね」


「はい。時間が合えば」


そういうと平手さんは来た道を引き返して行ったので、私もそのまま帰った。




翌日 平手さんにお弁当を渡すと「あ、マジで作ってきてくれたんですね。ありがとうございます」

とだけ言われた。反応薄いな。 


練習後 弁当箱を返してもらおうと平手さんに話しかけたら空になった弁当箱を渡され、「美味しかったです」とだけ言われた。


無表情だったけど本心。とだけ思っておこう。


またそのうち一緒に帰る時にしつこく問い詰めてやろう。


準備をしていつも通り私は由依と帰った。


校門を出ると体育館の明かりはまだついている。


私は正直 平手友梨奈が気に入った。


誰よりも努力家な平手友梨奈を。



おまけ


ひかる「あれ、てち。珍しくお弁当なんだ」

平手「うん。私もびっくり」

ひかる「あれ?てちが作ったんじゃないの?」

平手「まさか。理佐先輩が作ってくれた」


ひかる「えーうらやましい。でも私は小林さんに作ってほしい……なんなら作ってあげたい……」

平手「作ってあげなよ。こば喜ぶよ。」

ひかる「でも1番うらやましいのはてちだよ!なんで先輩後輩という関係でありながらそんなあだ名で呼べるの!?」

平手「んー。わかんない」

ひかる「あー!!少しでいいからてちになりたい!!」

平手「落ち着いてよ。ひかるんるん」

ひかる「かびるんるんみたいに言わないで! ……てかなんでそんな笑ってんの?」


平手「ん?そんなに笑ってた?……あーめちゃくちゃ美味しい」