「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は、思春期を拗らせた高校生が、幼馴染(めんま)の幽霊の出現で再生していく青春譚。自死遺族の自分も、遺された者の衝撃や罪悪感はよく分かる。めんまの死に直接的な責任は無くとも、あの時こうしていれば、あんな事を言わなければ、そんな想いが浮かんでは消える。それでも時間は心を癒す。少なくとも自分は、成長とともに衝撃が薄れ、罪悪感の過剰さと不合理さを理解できた。過去の生々しさが徐々に遠のき、新たな環境に順応していくのも人間の能力。しかし、本作の同級生たちは、10年近く前の過去に囚われ続ける。個人的に一番に違和感があったのは、女装して徘徊するゆきあつ。トラウマの表出としても余りに病的。もはや、めんまの死に呪われている。個人的には、ゆきあつの描写が非現実的かつ露悪的過ぎて、本作を好きになりきれない。大切な人の死が呪いになるか否かは、遺された者の生きざま次第でもある。
P.S. トラウマ描写に関しては、浜辺美波さんがめんまを演じた実写ドラマの方が違和感が少なかった。