『不適切にもほどがある!』

終わってみれば、クドカンらしいドタバタ喜劇。
遊びに満ちた小ネタや、案外質の高いミュージカルパートは愉しかった。

ただ正直、放送前からの自画自賛や、開始直後の賛辞には戸惑った。
それは『コンプライアンスに雁字搦めの現在に、疑問を投げかけている』や、クドカン自身の
「今は何かにつけて『ダメ』って言われるようになったけど、なぜダメなのかを考えない」
「『がんばれ』とか『かわいい』とか、本当はいい意味なのに。ドラマを観たあとにみんなで語り合ってほしいですね」
などの言葉。
普段から自分たちを縛っているコンプラに逆らう内容なので、制作陣にとっては物凄く挑戦なのかもしれない。
ただ、一般視聴者にとって、『コンプラに対する疑問』こそが常識なのを思い出して欲しい。
ドラマでも描かれたように、TV局にいちゃもんとつけてコンプラで表現を狭めるのは、極々一部の視聴者と、放送内容を観ずにSNSを炎上させる非視聴者。
Silent majorityの視聴者は、loud minorityのクレイマーにはそもそも疑問がある。

だから、本作に対して『言ってほしいことを代弁してくれた』という趣旨の褒め言葉が多いのだろう。
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でも『ピンポン』や『木更津キャッツアイ』の頃から、クドカンのトリッキーな脚本作を愉しんできたオッサンにとっては、大衆が言って欲しい "正論" を吐き出すドラマへの評価に違和感があった。
個人的に、主人公の "正論" に発見はゼロだった。
普段感じていることが繰り返されただけ。
加えて、この "正論" はガス抜きに過ぎない。
このドラマの視聴率が高かろうが、同じ制作陣が作る次回作は、きっと令和のコンプラをはみ出ない。
20年来のクドカンファンが期待しちゃうのは、視聴者の常識に糞を喰らわせる奇想天外さ。
個人的には『ぼくの魔法使い』や、『マンハッタンラブストーリー』の終盤のように、予想もつかない場所に連れて行ってほしい。
ただ、クドカンが "正論" を書くことが挑戦になる程、TV業界は閉塞しているのかもしれない。