「すずめの戸締り」
美しい絵、Girl meets Boyの甘酸っぱさは流石。東日本大震災の被災者に託す希望の言葉も感動的。ただ、3作続けて天災を人間が制御し得るものと描く拘り火には若干戸惑う。

 「君の名。」では隕石落下こそ防げないが、災害後の現在から情報を送る事で、住民を正しい避難位置に誘導した。ただ今は未だ、タイムリープで災害から逃れる技術はない。
 「天気の子」は、ヒロインの命を優先して、東京が雨に沈む、ある意味バッドエンド。ただ、特殊な条件が整えば、人間が天候を操作可能として描き、ヒロインを生贄にすれば降雨災害を防げる選択肢が提示されていた。天候を制御する技術は無くはないか、少なくとも日本では毎年起きる豪雨災害を、それらの技術で防げていない。
  「すずめの戸締り」では、東日本大震災こそ防げなかった過去として描かれているが、要石や閉じ師が人為的に地震の芽を摘めると描いた。しかし、実際の地震は予知も抑制も出来ない。できるのは、緊急地震速報で震源から揺れが到達する短い時間で体制を整えたり、津波が及びうる場所から避難する事くらい。耐震性の強化や防潮堤の建設は可能だが、地震そのものを制御できる訳ではない。
 新海監督には、天災は制御すべきという願望が垣間見えるが、科学技術が追いつけていない現在、オカルトで天災を制御する映画は、現実のリスクを若干矮小化しているようにも見える。