死と隣り合わせの情事。女の正体は、女神か、死神か――

 

『氷の微笑』

[Basic Instinct]

(1992年)アメリカ映画

 

 

 

<あらすじ>

元ロックスターのナイトクラブ経営者ジョニー・ボズがアイスピックで刺されてベッドの上で死んでいた。サンフランシスコ市警の刑事ニック・カラン(マイケル・ダグラス)は、被害者の恋人で美人作家のキャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)を尋問する。
彼女は数カ月前に事件とそっくりのミステリーを出版していたのだ。
彼女に翻弄されて捜査が難航する中、ニックの周囲で次々と新たな殺人事件が起きる……。

 

<スタッフ>

監督:ポール・ヴァーホーヴェン

脚本:ジョー・エスターハス

制作:アラン・マーシャル

制作総指揮:マリオ・カサール

音楽:ジェリー・ゴールドスミス

撮影:ヤン・デ・ボン

編集:フランク・J・ユリオステ

 

<キャスト>

シャロン・ストーン(キャサリン・トラメル)女流作家、ボズのセックスフレンド

マイケル・ダグラス(ニック・カラン)サンフランシスコ市警の刑事

ジョージ・ズンザ(ガス・モラン)ニックの同僚の刑事

ジーン・トリプルホーン(「ベス」エリザベス・ガーナー)ニックの恋人、精神科医、臨床心理学者

レイラニ・サレル(「ロキシー」ロクサンヌ・ハーディ)キャサリンの恋人

ダニエル・フォン・バーゲン(マーティン・ニールセン)内務課の捜査官

スティーヴン・トボロウスキー(ラモット)スタンフォード大学心理学教授

デニス・アーント(ウォーカー)警部

チェルシー・ロス(タルコット)本部長

ドロシー・マローン(ヘイゼル・ドブキンス)前科者の老婆

ビル・キャブレ(ジョニー・ボズ)元ロックスター、ナイトクラブ経営者

ウェイン・ナイト(ジョン・コレリー)地方検事副検事

 

 

感想

元ロックスターがセックス中に

アイスピックで滅多刺しにされて

殺されるという事件が発生。

その恋人キャサリンは事件と同じ手口の

犯罪小説を出版していて

容疑者として取り調べを受けるも

決定的な証拠が無い。

刑事ニックは彼女につきまとうが、

逆にキャサリンに翻弄されて

その魅力に惹かれていく。

果たして彼女は殺人者なのか?

それとも――?

 

魔性の女を演じたシャロン・ストーンが

一躍有名になった作品で、

中でも取調室で

シャロンが足を組み替えるシーンは

スカートの中が見えるか見えないかで

当時ものすごく話題になった。

 

実はこの場面はシャロンが監督に

騙されて撮影した場面らしい。

白い下着がカメラに反射するから何もつけないで

そこは写さなようにするという約束だったのに

後で見たらバッチリ写っていて

シャロンは監督をびんたするくらい怒ったとか。

脚本家もこんなシーンは書いてなくて

ヴァーホーヴェン監督のアドリブだったそうだ。

なんともひどい話だが

この時代だから許されたところもあるし、

当時ほぼ無名のシャロンにとっては

売名のチャンスだから納得したようだ。

が、これでセックスシンボルの印象がついて

後の親権問題では不利に働き

敗訴するという皮肉な結果に……。

 

監督のヴァーホーヴェンは

『ロボコップ』

『トータル・リコール』

この『氷の微笑』を挟んで

『スターシップ・トゥルーパーズ』と

ヒット作を連発している。

マイケル・ダグラスは個人的には

フィンチャー監督の『ゲーム』で

謎に振り回される主人公が印象的。

『危険な情事』でも女性に翻弄されて

良い意味でこういう役がハマってると思う。

ジーン・トリプルホーンは本作が

映画デビューだとか。

シャロンに負けじと

こちらも濡れ場が見られます。

 

で、『氷の微笑』ですが

かなり昔に観たことがあって、

レンタルビデオだったので解像度が低く

ボカしであそこは見えなかったが

子供心に強烈なインパクトだった。

その後、

シャーリーズ・セロンが好きになって

それからアナ・デ・アルマスなど

脱ぎ脱ぎ系の金髪セクシー美女が好きなのは

やっぱりシャロン・ストーンの影響が大きい。

 

犯人か?それとも犯人じゃないのか?

シャロンの演技の上手さで

最後まで緊張感が持続しているし、

危険な女とわかっていても

惹かれてしまう魅力がある。

エロティックなシーンは興奮するし

激しいカーチェイスもある。

ただしミステリーとしては平均以下、

過剰なフェイントのせいで

視聴者を余計に混乱させたし

どんでん返しというほど驚くことはなかった。

シャロンの魅力で加点したとしても

7点を超えるほどではないと思う。

 

 

★★★☆☆ 犯人の意外性

☆☆☆☆ 犯行トリック

★★★☆☆ 物語の面白さ

★★☆☆☆ 伏線の巧妙さ

★★★☆☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 △

エッチ度 ◎

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 7点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

ジョニー・ボズ ---●キャサリン・トラメル ---衝動【刺殺:アイスピック】

マーティン・ニールセン ---●キャサリン・トラメル ---障害の除去【射殺:38口径のリボルバー】

「ロキシー」ロクサンヌ・ハーディ ---●ニック・カラン ---事故【転落死:車のハンドル切り替えミス】

※突っ込んできたニックの車を避けようとしてロキシーの車が橋から転落した。

ガス・モラン ---●キャサリン・トラメル ---衝動【刺殺:アイスピック】

「ベス」エリザベス・ガーナー ---●ニック・カラン ---衝動【射殺:ピストル】

 

〇ドブキンス一家(夫・3人の子供) ---●ヘイゼル・ドブキンス ---衝動【刺殺:ナイフ】

〇キャサリンの両親 ---●キャサリン・トラメル ---実験・娯楽?【爆死:船】

〇ノア・ゴールドシュタイン教授 ---●キャサリン・トラメル ---衝動?【刺殺:アイスピック】

〇マニー・バスケズ ---●対戦相手 ---事故【殴殺:パンチ】

〇ロキシーの弟2人 ---●「ロキシー」ロクサンヌ・ハーディ ---衝動【斬殺:カミソリ】

〇ジョゼフ・ガーナー ---●キャサリン・トラメル ---衝動【射殺:38口径リボルバー】

 

<結末>

キャサリンとベスは大学時代に同級生で

関係を持ったことがあると聞き、

教授殺しやニールセン殺し、

さらに夫の不審死もすべて

ベスが犯人ではないかとニックは疑問を持つ。

それはキャサリンに惚れてしまったから

彼女を犯人と思いたくないという想いもあった。

 

ガスと共に向かったビルの4階で

エレベーターから出たガスが

アイスピックで滅多刺しにされて死亡。

遅れて駆けつけて逆上するニックの前に

ここに呼び出されたというベスが現れて

ベスへの疑念からニックは

彼女の言葉を無視して射殺してしまう。

 

ベスは銃を持っていなかったし

反撃するそぶりもなかった。

ニックはキャサリンの仕業だと気づくも

なぜかすべての証拠がベス犯人説を示し、

自分の正当防衛を主張するためにも

そのままベスを犯人にするしかなかった。

 

それからもニックはキャサリンを抱く。

今は甘い快楽に身を委ねるしかない。

キャサリンもニックの要求に応える。

ベッドの下に

冷たいアイスピックを忍ばせて――。

 

真犯人は誰なのか?

何度も殺すフェイントをしたり

ベスが犯人でも一応は筋が通っていることから

本当は犯人じゃなかった?と思わせて

ベッドの下のアイスピックを映して

やっぱり犯人なのか?と

多くの人がモヤモヤしたあの結末。

 

真犯人は――キャサリンです。

監督も出演者もそう答えているから間違いない。

とすると1番の問題が

キャサリンの殺人はどこまでかということ。

 

キャサリンの両親は彼女が高校生の時に

ボートの爆発事故で亡くなっているが、

後に執筆した最初の犯罪小説で

主人公が好奇心と実験を理由に

両親を爆発事故で殺している。

まったく無関係なことは

書かない主義のキャサリンが

小説に書くということは真実の可能性が高い。

 

ボクサーのマニー・バスケズの死は

リング上で殴られて死んだから無関係かと思うが

コカイン中毒の彼女が

彼氏にコカインを服用させるなどして

試合に影響がでたのかもしれない。

 

大学のゴールドシュタイン教授も

エリザベスが殺している。

後に同様の手口で何度も犯行に及ぶ

アイスピック殺人の開幕だ。

ジョニー・ボズもアイスピック。

彼はもう小説に登場させたから

いつでも用済みだった。

 

ニックと口論した後に殺されたニールセンは

ニックを疑わせるというよりも

キャサリンにとって知られたくない秘密を

彼が嗅ぎつけてきたため

邪魔な存在だから殺されたと思われる。

貸金庫に5万ドル入っていたから

もしかすると強請られていたのかもしれない。

 

ここで重要なのが「38口径のリボルバー」

ニールセンを殺した銃です。

これが鍵の壊れたベスの部屋の本棚で発見された。

監督が「壊れた部屋の鍵」が重要と言うのだから

このリボルバーはベスのものではないことになる。

すると同じ銃で殺されたことが証明されている

ジョゼフ・ガーナーも

キャサリンが殺したということになる。

 

なぜベスの夫まで?

ベスはキャサリンの方が

自分に執着していたと言うので

ベスを自分のものにしたかったのだろうか。

それをニールセンが捜査して

強請ってきたので邪魔だった……とか。

 

ロキシーがニックを殺そうとしたのは

本当に誤算だったと思う。

なぜなら小説では

そんな死に方を予定していないから。

シューターは悪い女に騙されて殺される予定です。

ロキシーが死んだことを悲しむより

自分の計画が狂わずに済んだから

メインディッシュの楽しみが残って

良かったと思っていそう。

(あくまでも俺の主観ね)

 

ガス殺しはベスに罪を着せるためのもので

彼にはなんの恨みも無い。

小説の通りに殺したいという

彼女のポリシーがそうさせた。

小説では相棒の死体がエレベーターから

脚が飛びだした形になっていたのを

シューターが目撃するだけなので

事件後の現場検証で

死体が運ばれる前なら同じ状況になる。

本当は死体をベスに発見させたかったはず。

ニックが駆けつけてくるのは予定外だったと思う。

 

しかしそれが好転し

ニックがベスの口を封じてくれて

ベスが犯人として事件が片付いた。

キャサリンがニックと寝るのは

感謝の気持ちもあるのだろうか。

しかしいずれは

登場人物は退場しなければならない。

あのアイスピックが不穏な未来を暗示している。

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

【ニックの嗜好】

ニックはコカインもタバコもやめたと言う。

しかしキャサリンはしきりに

ニックにタバコを勧めてくる。

  • なぜかニックの嗜好を知っているキャサリン。この時点で彼女の方が一枚上手だということがわかる。

 

【専攻は心理学】

キャサリンの情報を調べるニック。

バークレー大学を卒業していて

専攻は文学と心理学だとわかった。

  • 臨床心理学者ベスとの繋がりを暗示する伏線。後にキャサリンとベスは大学の同窓で同じ心理学を学び、1度愛し合った過去が明らかになる。

 

【尋問中にタバコを吸う】

キャサリンが尋問中にタバコを吸う。

ここは禁煙だと注意されても

「吸ったら逮捕されるの?」と

平然と答えるキャサリン。

  • 後に尋問されたニックも同じことを言ってタバコを吸う。小説の筋書をトレースするのと同じようにキャサリンに影響されて行動を操られ始めている

 

★④【早撃ち(シューター)】

ニックは昔、

観光客2人を射殺してしまったことがあり

「早撃ち」と不名誉なあだ名をつけられている。

  • 物語のクライマックスで、ポケットに手を入れたベスを殺人者と勘違いして「早撃ち」して殺してしまう。

 

【思い出のキーホルダー】

ベスはニックの部屋の合鍵に

ザ・シンプソンズのキーホルダーをつけている。

ニックの逆鱗に触れて鍵を引きちぎられて

キーホルダーだけ返される。

  • ベスは撃たれる直前にポケットの中のキーホルダーを触っていた。それは2人の思い出の詰まった部屋の鍵がついていたもの。ベスは無意識に思い出にすがろうとしていたのだろうか。

 

【貸金庫の5万ドル】

ニールセンが3ヶ月前に借りた貸金庫に

5万ドルが入っていた。

  • ニールセンが誰かを強請っているという伏線。殺された原因はそれにある。後に彼がジョゼフ・ガーナーの死を調べていることがわかり、その犯人から強請っているのだろうとわかる。本編では明かさないが、上の「38口径リボルバー」のロジックでキャサリンが犯人と推理できる。

 

【死亡フラグ】

ガスがニックの車に乗って事故に遭いたくない、

俺は定年まで働いて金時計をもらうんだと言う。

  • こういう先のことを語って後に死亡する人間は、その時の発言が「死亡フラグ」と呼ばれる。「回収されないことが確定して回収される」伏線の1種。

 

【心理学】

心理学に長けたキャサリンは

人を操る女だと指摘するベスに

それは臨床心理学者の君も同じだと返すニック。

  • ベスが犯人である可能性の示唆。結局それはミスリードなのですが。

 

【ベスの部屋の鍵】

ベスの部屋の錠前が壊れているため

簡単にベスの部屋に入れたニック。

そのことを指摘するとベスは

「掛けたけど錠前が変になっている」と答えた。

帰り際にニックが

「鍵を直したほうがいい」と言ったが

自分を疑われて興奮しているベスは

ニックの話を聞いていないようだった。

  • 鍵が壊れていたためにキャサリンに部屋へ侵入をされて、偽の証拠(38口径リボルバーや写真など)を部屋に置かれて殺人犯にされてしまった。

 

【タイプライターの原稿】

キャサリンのビーチハウスに寄ったニックは

ちょうどキャサリンの新作本

「シューター」のクライマックスの原稿を

タイプライターで自動出力しているのを目撃する。

そこには「エレベーターには相棒の死体があり

脚が飛びだしていた」と書かれていた。

  • キャサリンが真犯人だということを示す重要な伏線。殺人前にこれだけ克明に死体の状況を予知したり偶然が重なるとは考えにくい。小説に合わせてこれから殺人を犯そうとしていることは明らかだ

 

欠点や疑問など

  • 本の筋書通りに本の作者が殺すわけがないということを「アリバイ」と言っているが、アリバイは「不在証明」のことで、その犯行現場にいなかった証拠のことです。ジョニー・ボズ殺害時のキャサリンはホテルに行かずに屋敷に帰ったと言うが、それを証言してくれるのは(共犯かもしれない)ロキシーの証言だけなので、まったくアリバイではない。
  • ベスとキャサリンの大学時代のルームメイト(おそらくブラフ)のビルの405号室にガスとベスを誘い出したが、そこにニックも居合わせたり、ガスを先行させて後から来させるとかキャサリンが予定していたシナリオではないはず。ニックを拾って行ったのだって偶然ぽかった。しかし小説はシューターが相棒の死体を発見しているからニックもシナリオの中に入っていないとおかしい。キャサリンはそこまで細かく人を操れる神なのか?展開がどうも都合良すぎる。
  • ビルに入ったガスを見送ったニックが、急にビルを見上げて血相を変えて車を飛びだしたがなにを見たのかわからない。おそらくあれはキャサリンの原稿に「相棒の死体」と「エレベーター」が書いてあったことを思い出してガスの身に危険が迫っていると察したのだと思う。……がうまく伝わっていない。
  • 心理学者のベスが、「ポケットから手を出せ」と銃を構えて殺気立っている相手に対して、すぐ両手を挙げて無抵抗を示さないで右手をポケットでもぞもぞさせるのは解せない。相手の心理すら分析できていない。そもそもキーホルダーを触る必要性がない。
  • ロキシーの事故は難しいが、ベス射殺に関してはニックが犯人なのに、犯人を撃ったのは正当防衛だから逮捕されないというのは納得できない。
  • 殺すかと思わせてフェイントを3回も入れたのはやりすぎ。結局どっちなのかよくわからないという人が続出したのも仕方ない。それで何度も同じことを聞かれて監督がイライラしたそうだが、あんたのくどい見せ方が悪かったんだよ。最後は愛し合った後にアイスピックに手を伸ばす場面で終わればよかったと思う。あるいはニックの部屋にはアイスピックが無い設定にしておけば、わざわざアイスピックを持ってきて忍ばせているコイツが絶対犯人だとわかってもらえたはずです。(実際のアレはニックの部屋のアイスピックでしょう)
  • 最後にニックは殺されなかったが、結局は殺されてしまうのか?俺の推測は「秘密を知る人物なので消される可能性は大いにあるが、キャサリンは楽しめるうちは楽しむ」と思う。ベスが犯人ではないと知っている唯一の人物がニックで、それでもキャサリンを犯人だと結論づける証拠がないためにキャサリンに従順に従うしかない状態。最後の会話シーンもキャサリンは子供は嫌いなので、ニックが「子供が欲しい」と言っていたらそのまま殺された可能性が高い。恋人ベスを撃ち殺した自責の念からアイスピックで自殺した――と見せかける偽装を行ってキャサリンは跡形もなく消えたと思われます。ニックが「子供は作らず」と言い直したのでアイスピックを離したのではないだろうか。

 

 

ベスの留守電の謎

謎なのが「ベスの留守電」。

ベスは「留守番電話に入っていた

ガスからの伝言」で

現場のビルに来たと言うが、

これはキャサリンの仕業だったのか

本当にガスからの電話だったのか不明。

 

ルームメイトに話を聞きにいくのに

ベスも呼ぶ必要はないから

ガスが直接電話したとは考えにくい。

後で警察がベスの留守電を調べたら

そんなメッセージはなくテープは未使用で

消去された形跡もないというから、

ガスからの留守電は

ベスのでっちあげの可能性が高い。

だとすればベスは何の目的で

あの時間にあの場所へどうやって呼び出されたのか?

 

……え~と、

キャサリンが犯人とするならば、

①「ガスがこのビルの405号室で

待っているから何時にここへ行け」と

キャサリンが電話したか

直接会って伝えれば同じ状況になる。

ただしこれだと2人は今も繋がっていて

連絡を取り合う仲ということになって、

それはどうも違和感がある。

 

そこで別の推理をしてみよう。

②キャサリンはベスの部屋に声色を変えて

ルームメイトのふりをして

「今夜〇時にガスという刑事と

会う約束があるの。

あなたのことを知りたがっていたわ」と

留守電に残す。

自分のことをなぜそこまで調べるのか、

ガスに会って聞きたいベスは

その時間にやってきて狙い通りにことは進む。

そして後でベスの部屋に

リボルバーや写真を置いた際に、

留守電のテープを新品に交換するのだ。

さすがにベスの口から

留守電という言葉が出ているのに

「テープが未使用だった」というのは不自然。

1回も留守電使ってない人の口から

留守電という言葉が出てきますか?

――という俺の推理で後者②を推します。

 

NBCのBlu-rayの日本語字幕がひどい

 

俺は最初に買ったのは

NBCユニバーサルが発売している

Blu-rayだったがこれがひどすぎて

後から発売した

角川版のBlu-rayを買い直したくらいだ。

 

NBC版はシャロンが

足を組んでいるジャケットの方です。

収録されている音声は英語のみ、

字幕は日本語のみというシンプルなもの。

 

「早撃ち(シューター)」を

「ぶっ放し屋」とか、

「キチガイか!」とか、

「ゴメンなさい」とか、

ニールセンがネルソンになったり

ニルセンになったりする(統一しろ)。

 

警部補がニックに命令する場面で

「お前は彼女を監視しろ」と言うのだが

この字幕は、

「お前は彼女の行き先が分かる」と言うだけ。

ん?だからどうしろと?

 

アイスピックでアイスブロックを砕いて

「刺すのが好きなの」と言う場面、

「でこぼこな端が好き」だと

好きなのがアイスの形のことになってしまう。

「夫はコカインに夢中」という場面の

「ニッキーは炎へ近づいた」も意味不明。

 

キャサリンが「コークある?」と聞いて

ニックが「ペプシなら」と答えるが

「コカインのことよ」と挑発する場面が

この字幕だと、

「同じものじゃないでしょ」

「ああ、違う」とわかりにくい。

 

ラストも「めでたしめでたし」で締めて

なんか軽い感じがする。

 

しかし1番の欠点は

キャサリンが犯人であることを示す

タイプライターの文章の字幕。

これが適当すぎる。

実際の文章は

Shooter raced into the ~r pounded the button for the ~ly up the staircase, his brea~ ~s. His partner's dead body la~ elevator, legs sticking out.

これを訳すと

「シューターは階段を駆け上がった。

エレベーターのボタンを押した。

エレベーターには相棒の死体があり

脚が飛びだしていた」となる。

 

ここで重要なのは「相棒の死体」

「エレベーターから足が出ている」の2点。

これだけでもあれば

キャサリンが犯人だとわかるのだが

問題のNBCの訳はこちら。

「彼の両親の死体が……

脚が突き出し……」

――??

両親がどうしたって?

なぜpartnerが両親になるの?

parentsってこと?

さすがにこれはひどいと思うよ。

 

幸い他の翻訳、

アマプラの字幕や角川Blu-rayは

相棒の死体がエレベーターで死んだことを

簡潔に伝えていた。

おそらくこの場面は一瞬目に入る程度で

結末まで気づかせたくない伏線だと思うから

できるだけ省略したいのだとは思うが

もう少しマシな翻訳をしてほしい。

 

実は角川版Blu-rayもおかしいところがあって

ロキシーに犯罪歴があったと

キャサリンに教える場面で

「殺人はタバコと違って

やめられるのよ(can quit)」が

なぜか「やめられない」になって

意味が逆転していた。

しっかりしてくれよ……。

 

名場面・名台詞

心理学者のラモット教授が

犯人の心理分析をする。

自分の小説を作者自身が真似て

実際に犯行に及ぶのは

異常な精神の持ち主だと言う。

ラモット「それに極めて危険な人物です。極めて邪悪で……」

 

キャサリンを警察署まで同行する。

その車内で次の新作の話題に。

ニック「新作はどういう話です?」

キャサリン「ある刑事が悪い女に惚れてしまうの」

ニック「……それで、どうなるんです?」

キャサリン「殺されるのよ」

 

キャサリンがニックの家に来て挑発。

帰りにすれ違ったガスがニックを心配する。

ガス「なんでお前は肥だめに頭つっこむようなマネをしたがるんだ?」

ニック「彼女はゲームを仕掛けた。お相手するさ」

ガス「彼女のお相手はみんなくたばる」

ニック「よくわかってる」

 

キャサリンと一夜を共にして

次第にキャサリンに惚れていくニック。

キャサリン「ベッドでイカせてもらったからといって打ち明け話をする気はないわよ。知られたくないことはしっかりしまっておくわ」

ニック「引きずり出すさ。尻尾をつかんでやる」

キャサリン「いいえ。あたしに夢中になるだけよ」

ニック「もう夢中になってるさ。(そう言ってキャサリンにキスをする)……だが必ず捕まえる。本に書いといてもいい」

 

ロキシーの死を悲しむ

キャサリンが涙をこぼす。

キャサリン「みんな……あたしの好きな人は死んじゃう」

 

 キャサリンを抱き寄せるニック。

 

ニック「泣かないで」

キャサリン「……抱いてちょうだい」

 

ロキシーが過去に弟を殺した犯罪歴があったと

ニックはキャサリンに教えると

すでにキャサリンは知っていて付き合っていた。

キャサリン「ええ、知ってるわ。殺人者の話を書いてるんですもの。取材中に親しくなることもあるわ。あなたもその1人。(ニックが吸っているタバコを取ってキャサリンが吸う)殺人はタバコと違って……やめられるのよ」

 

またキャサリンを抱いたニックは

今ニックを主人公に書いている

小説の説末を変えさせると言う。

しかし……。

ニック「刑事は悪い女に惚れてしまう。だが死なないんだ」

キャサリン「それで2人はどうなるの?」

ニック「ヤリまくってガキを作って、幸せに暮らす」

キャサリン「……売れないわね」

ニック「ははっ……どうして?」

キャサリン「誰かが死ななきゃ」

ニック「……なぜ?」

キャサリン「そういうことになってるの」

 

ベスが犯人となって事件が終わり

セックスをするニックとキャサリン。

キャサリン「あたしたち、どうなるの?」

ニック「ヤリまくってガキを作って幸せに暮らすのさ」

 

 ベッドの下に手を伸ばすキャサリン。

 

キャサリン「子供は嫌いよ」

ニック「じゃあヤリまくってガキは作らず、2人で幸せにくらそう」

 

 振り向いたニックの首にキャサリンが右手を回し、再び抱きついて熱いキス。しかし、そのベッドの下には先程手を伸ばしかけたアイスピックがあった。

 

好事家のためのトリックノートトリック分類表

9-A、その他「特殊トリック」

●筋書・教科書殺人

【自分の小説】

犯罪小説家が自分の本の中の殺人と同じ方法で殺人を犯す。

 

 

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