10 BABYMETAL BUDOKAN考察(4) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
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★今日のベビメタ
本日4月24日は、2015年、The One 女性限定「赤ミサ」が行われ、2017年には、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、フロリダ州ジャクソンビルVeteran's Memorial Arenaに出演した日DEATH。



10 BABYMETAL BUDOKAN最終日の4月15日、終演後に発表されたのは、6月29日(土)に総集編をオンライン配信するということだけであり、METAL RESISTANCE最終章のあとに、どんな展開になるのかは一切公表されなかった。
10周年を迎えたBABYMETALが、METAL RESISTANCE最終章=Episode Xを行うということは、2020年1月のLegend Metal Galaxy@幕張メッセで発表されており、その際には20210年10月10日が有力だった。
しかし、ご存じのように武漢ウイルスによる「パンデミック」によって、汎ヨーロッパツアー以降のツアー日程はすべて中止あるいは延期となり、10月10日もいつのまにか消えてしまった。
一度目の「緊急事態宣言」期間中、BABYMETALは“STAY METAL”を掲げて、4月10-11日に2016年9月の東京ドームRED NIGHT&BLACK NIGHTを、5月1日に2016年4月のLive at WembleyをYouTubeでプレミア公開した。
また、2020年7月31日と8月3日にLegend-M-のライブビューイング、9月10日にはLegend METAL GALAXY ジャパンプレミアを全国52映画館で実施した。
9月9日にはYouTubeでオンライングッズ販売番組「ベビネットDADADA」がスタートし、件の10月10日にはベストアルバム『10 BABYMETAL YEARS』の発売がアナウンスされ、ファンサイトTHE ONEでは、10曲を選ぶファン投票やクイズなどのオンラインイベントも始まった。
要するにこのイベントが、1月に発表された「10月10日」の代用になったのだ。
だが、この間、BABYMETAL運営は、観客にリアルタイムのBABYMETALのパフォーマンスを届ける唯一の手段であるライブの準備を二つの方向性で進めていたらしい。
一つは12月12日に実施された目黒鹿鳴館でのオンラインライブ「STAY METAL STAY ROCK-MAY-KAN」である。


目黒鹿鳴館は、いうまでもなくロック/メタルの聖地であり、BABYMETALは単独ユニットとして「ヘドバンギャー‼」でインディーズデビューした2012年7月のコルセット祭り、2013年7月のキツネ祭りでこの会場を使った。もちろんスタンディングでも250名しか入らないから、「世界のBABYMETAL」の有観客ライブ会場にはならない。まして2020年3月に、大阪のライブハウスで、「感染者」の「クラスター」が発生したことで、「ライブハウス狩り」ともいうべき風潮があったから、目黒鹿鳴館での有観客ライブはできない。
だが、ここを会場としてオンラインライブとすれば、恩返しにもなるし、10年目を迎えたBABYMETALの「原点」を示すこともできる。
実際にどのくらいの有料視聴者がいたのかは公表されていないが、チケット付属の骨柄ロンTの到着が、12月12日当日はおろか、2021年2月中旬の10 BABYMETAL BUDOKAN Ⅲ-Ⅳ頃になったことを考えると、運営が想定した以上の視聴者数だったのではないかと思われる。
そしてもう一つが、1月から4月まで連続10公演となる日本武道館10公演であった。


過去、日本武道館を連続公演で用いたアーティストがいなかったわけではない。
だが、ほとんどのアーティストが有観客ライブを「自粛」し、オンラインライブの仕組みを提供する会社も増えていた中、あえて東京のど真ん中に大会場で有観客ライブを10回連続で行うというのは、一つ間違えば世間の指弾を受けかねない「賭け」だった。
しかも、10 BABYMETAL BUDOKAN開催が発表された当時、東京都を中心にPCR検査の陽性判定者≠マスコミのいう「感染者」は急速に増えつつあり、一部政党やマスコミは「緊急事態宣言」の再発出を要求していた。
実際、年を越してすぐ、東京都の小池百合子知事は首都圏3県の知事を巻き込み、国に対して「緊急事態宣言」の発出を要請し、菅首相は二度目の「緊急事態宣言」を1月9日から1都3県に発出した。
これで、すでにⅠ~Ⅵまでチケットが完売していた10 BABYMETAL BUDOKANは息の根を止められたかにみえた。
しかし、菅首相が発出した「緊急事態宣言」のレギュレーションでは、スポーツや音楽のイベント開催について、「収容定員の1/2、最大5,000人まで」「会場内での飲食禁止」「客席の間隔を開け、“密”を避ける」といった内容で、逆に言うなら、これさえ守ればイベントを開催してもよいというものだった。
BABYMETAL運営はこうなることがわかっていたのか。
一部上場企業である株式会社アミューズは、東京オリンピックを通じて、官邸サイドとも通じている(らしい)から、その線で、たとえ緊急事態宣言が出ても5,000人までであれば開催可能だと事前にわかっていたのかもしれない。
だから、チケット売り出しの段階から、スタンディングの「モッシュッシュピット」はなく、シート席だけであり、「超」モッシュッシュシートの座席は1階席A~Bの2列だけで、ほとんどが「並」モッシュッシュシートだった。
5,000人が収容人数の半分以下で、かつBABYMETAL10周年にふさわしい会場といえば、日本武道館をおいてほかにない。
チケット代は1万5000円と、他のアイドルやアーティストに比べて割高で、オンラインでグッズ販売も行われたから、1公演当たりの売り上げは8000万円~9000万円になる。
それを、10連続公演とすることで、のべ50,000人動員、8~9億円の売り上げを確保したと思われる。
会場使用料やスタッフ人件費は10回分かかるが、今回の舞台装置は可動部分が少なく、埋め込み型のスクリーンによって場面転換する方式であり、10公演とも同じだから、1回あたりの“原価率”は低くなる。
他のアイドルやアーティストが、ライブができないために苦境に陥っているのに対して、10 BABYMETAL BUDOKANは、営業面からみれば大成功だったのではないか。めでたし、めでたし。
唯一不満だったのは、「緊急事態宣言」下で、しかも東京のど真ん中で、5000人とはいえ、10周年を記念する有観客ライブを敢行したBABYMETALは、本当ならマスコミにもっと大きく取り上げられてしかるべきなのだが、なぜかほとんどのマスメディアは報道しなかったことである。
とはいえ、もし偏向ワイドショーなどで大々的に報道されたら、「不要不急のコンサートで、若者に感染を広げている」とかいって指弾する馬鹿コメンテーターもいたと思うので、それよりはいいと思うしかない。
さて、問題は、METAL RESISTANCE最終章として無事10ゴングを鳴らしたBABYMETALが、次にどう展開するのかが、結局、発表されなかったことだ。
METAL RESISTANCEは、2012年10月のLegend “I”で、BABYMETALがこの世に降臨した使命として位置づけられた。
以降、2014年の日本武道館公演までの国内活動が第1章であり、世界進出を果たした2014年7月からが第2章、10か国ツアーをやりつつ、国内では新春キツネ祭り@SSA~巨大天下一メタル武道会@幕張メッセ~Final Chapter of Trilogy@横アリまでの“三部作”を展開した2015年が第3章、2ndアルバム『METAL RESISTANCE』がリリースされ、Wembley Arena~東京ドームへと上り詰めた2016年が第4章、2017年が第5章で「5大キツネ祭り」が実施された。
だが、2018年1月に藤岡幹夫氏が逝去されたことで、2017年12月2-3日のLegend -S-洗礼の儀@広島GAは、それだけで第6章とされた。
これによって2018年のYUIMETAL欠場~脱退に至るDarksideツアーは第7章となり、Chosen Sevenもそこから来ている。
鞘師里保・藤平華乃・岡崎百々子がアベンジャーとして加わり、3rdアルバム『METAL GALAXY』がリリースされた2019年は第8章である。
そして、2020年のLegend Metal Galaxy@幕張メッセで第9章の開幕が宣言され、この時点で2020年10月10日が最終章Xだとされた。
しかし、前述したように、2020年10月10日に最終章を飾るライブを行うことはできなかった。
そのため、改めて組み直された2021年1月19日~4月15日までの10公演が、最終章Xだったと考えられるのである。
その最終章が終わってしまった。
「ありがとうMETAL RESISTANCE」(BABYMETAL公式ツイッター)はいいのだが、「メタルを通じて世界を再びひとつにする」という使命が終わったわけではなかろう。
逆に現在、世界は武漢ウイルス禍によって分断され、人と人とが直接触れ合うことさえできなくなっている。今こそ、世界は救世主BABYMETALを必要としているのである。
では、METAL RESISTANCEに代わる新たなBABYMETALの使命とは何か。
それは、METAL RESISTANCEとは何だったのかを考えることである程度わかってくる。
この言葉が初めて発出されたのは、2012年、Legend ”I”の「紙芝居」である。
その冒頭、「昨今、世界は“巨大勢力アイドル”の圧倒的な魔力によって支配され…アイドルソング以外の音楽は禁じられ、メタルも例外ではなかった」という世界観が語られた。


もちろんこれはKOBAMETALの被害妄想であるが、当時の日本の音楽業界がAKB48の全盛期で、1980年代のメタルブームやビジュアル系ブームが遠い過去になりつつあったのは事実だ。
まだ幼かったBABYMETALが、「メタルの神キツネ様」に召喚された「アイドル界のダークヒロイン」という設定でトップアイドルになることで、ヘヴィメタルという音楽を再び日本の音楽市場でメジャーなジャンルにするというのが、METAL RESISTANCEの「意味」ではなかったか。
しかし、2010年代のアイドルソングにおいて、ディストーションのかかったギターソロや、裏拍のハードロックっぽいリズムはすでに“普通”だった。
例えば、AKB48の「ヘビーローテーション」はロックンロールだし、ももいろクローバーZの楽曲「猛烈宇宙交響曲第七楽章・無限の愛」には元MEGADEATHのマーティ・フリードマン、「サラバ、愛しき悲しみたちよ」には布袋寅泰、「夢の浮世に咲いてみな」にはKISSが参加した。
BABYMETALの母体であるさくら学院の「Friends」や、中元すず香の卒業ソング「My Graduation Toss」も下降クリシェを多用したロックンロールである。
したがって、KOBAMETALがBABYMETALにやらせたかったのは、単なる「ロック風」「メタル風」のアイドルソングではなく、また、Kawaiiアイドルにデスメタルやスラッシュメタルをやらせるという変態的アプローチですらなく、「アイドル」というフォーマットを用いつつも、メタルの本質に迫る音楽性を表現できるアーティストを育てるということだったのだと思う。
その結果、この10年間で、中元すず香の歌唱、菊地最愛のダンスの表現力は「アイドル」の域をはるかに超え、世界レベルの技量を身につけるに至ったし、『METAL GALAXY』に収録された楽曲は、インド音楽からポルカまで、世界のさまざまな民族音楽や、エクストリームなテクノ・ラップメタル、シティポップやディスコ、サンバのリズムのバブル期ポップスから、プログレッシブメタル~パワーメタルまで、幅広い音楽性をBABYMETALらしさに「融合」した唯一無二の音楽になっている。
だから、BABYMETALの成功によって、ヘヴィメタルという音楽ジャンルを日本の音楽市場で再び話題に上るようにしたという意味でも、「メタル」をキーワードにしつつ高い音楽性を表現するアーティストを育てるという意味でも、METAL RESISTANCE=KOBAMETALのプロデュースの目的は達成されたといえるだろう。
だが、これで終わりということはない。
中元すず香と菊地最愛が「普通の女の子」に戻るならともかく、二人のアーティスト人生はこれからも続いていくのだから。
いや、KOBAMETALによって表現者として育てられた二人にとっては、METAL RESISTANCEの終わりとは、卒業=独り立ちのスタートラインとみることもできる。
大人たちのアイデアや方向性に従うだけでなく、これからは自分たちが追求したいことを自由に表現していく。作詞・作曲・演奏ということでなくても、少なくとも、これから創る楽曲やライブ構成には、二人の発想や“想い”を反映させていく。
バンド形式ではないBABYMETALのユニークな音楽性は、これまでKOBAMETALのプロデュースに由来するものとされ、フロントのパフォーマー三人は、「大人の操り人形」だと言われたこともある。
だが、これからは普通のバンドと同じように、自分たちのオリジナリティで勝負していく。
それが、BABYMETALの「次のステップ」なのではないだろうか。
去年、今年は途切れているとはいえ、欧米のフェスへの出演経験を積んだことで、世界のメタル/ロック市場で何が求められているかを、彼女たちは肌で知っている。
彼女たちが普通のバンドと違うのは、歌とダンスに関しては、すでに自分たちの表現したいことを実現する技量を十分に身に着けていることである。
10 BABYMETAL BUDOKANで、SU-は歌の凄みを見せつけ、正確かつしなやかなダンスも見せた。
MOAはダンサーとしての技量をさらに上げ、得も言われぬ“軽み”を感じさせるとともに、ソロシンガーとしても、4人のダンサーを率いて大観衆を沸かせた。
アベンジャーとしては、岡崎百々子が昨秋以降フル出演し、今やBABYMETALのライブには欠かせないピースとなった。
メンバー構成をどうするかという重大問題はあるにせよ、「次の10年計画」が発表されるときには、こういうことも含めて、彼女たちなりの青写真ができたときだろう。
武漢ウイルス禍が長引いているので、2021年のツアーや大規模ライブのスケジュールが決まらず、まだ発表はできない。
だが、昨年ぼくらが学んだように、数カ月単位でズレたとしても、予定されていたことはいつか実現される。
その日に期待しつつ、10 BABYMETAL BUDOKAN考察を終わろう。