Another 10 Yearsベビメタ名場面(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日3月28日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

<2012年その1>

●2012年1月9日
Woman' Power 20th Anniversary @渋谷O-WEST(定員600)
<セトリ 3曲>
01.ド・キ・ド・キ☆モーニング
02.いいね!
03.イジメ、ダメ、ゼッタイ

Woman’s Powerは、1980年代に日比谷野音を舞台に、SHOW-YA、プリンセス・プリンセスなどが出演していた「NAONのYAON」の休止を受けて、カメラマンの水津宏氏が1991年にスタートした女性ロックバンドのフェスである。
20周年となる2011年は、DESTROSE、Aldious、Be-B、SHOW-YAがラインナップされ、そこにBABYMETALが呼ばれた。1970年代のカルメン・マキ&OZ(「わたしは風」)から連綿と続く日本の女性ロックバンドの系譜を継ぐ者と目されたのだろう。
とはいえ、日付を見るとSU-METALは当時中学1年生、YUIMETALとMOAMETALに至ってはまだ小学6年生である。あまりに幼すぎる。
水津宏氏が直接ブッキングしたのか定かではないが、まだあどけないBABYMETALが、ただのアイドルグループの企画ユニットではないことに気づいていたとすれば、それこそ慧眼という他はない。
セットリストは上記3曲だが、BGMには「紅月-アカツキ-」が流れていたという。すでにスタジオで収録されていたのだろう。
確かに、『10 BABYMETAL YEARS』には収録されなかったが、「いいね!」はパラパラ風のダンス・ビートで入り、途中、ラップパートがあり、「♪きつねだお!」からデスメタルのブレイクダウンになり、そこに童謡「コガネムシ」のメロディが重なるというジェットコースターのような楽曲であり、アイドルソングの範疇をはるかに超えていた。
また、「紅月-アカツキ-」は、実演こそされなかったがジャパメタそのものであり、フィニッシュソングの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」はソナタ・アークティカを彷彿させるパワーメタルだった。
「しょせんアイドルじゃないか」という色眼鏡を外し、自分の耳と目で彼女たちのパフォーマンスに向き合えば、幼くしてこれだけ完成度の高いメタル楽曲を歌い踊るBABYMETALが、その後の日本の女性ロック史に大きな足跡を残すことを予見することもできただろう。
だが、当時、ほとんどのロック関係者は、海外誌の受け売りをするばかりで、そのような自分の耳を持っていなかった。その意味で幼いBABYMETALを出演させたWomen’s Power 20thは、日本のロック史に燦然と輝いている。

●2012年3月21日
ニッポン放送「ミュ~コミプラス」
前述した吉田尚記氏がパーソナリティを務めるニッポン放送「ミュ~コミプラス」に初出演したのがこの日。
ぼくの考えでは、このオンエアで、BABYMETALが「メタルバンドであること」は、KOBAMETALにやらされてるんじゃなくて、「自分からやりに行ってる」ことが確定した。
吉田尚記氏は冒頭、「私、20年アイドルを見続けておりますが、最大の衝撃です」という。
そして、その発言は、当時は「お世辞」に近い印象だったが、今となっては正鵠を射ていたことがわかる。
当時全盛を極めていたAKB48も、その後にトップアイドルになった乃木坂46も、アジアでのライブはできたが、毎年欧米ツアーを行い、米ビルボード総合アルバムチャートで13位、英オフィシャルチャートのロック部門でThe Beatlesを抜くグループになることはできなかった。
そして、吉田氏の「どんな音楽が好きなんですか?」という質問に、MOAが「ギターやってるからYUIさん、大塚愛、セックスマシンガンズのANCHANGさんの♪みかんみかん」と答え、YUIが「アイドル、ダンス習っているのでレディ・ガガ、EXILE、安室奈美恵さんとか」、SU-が「洋楽だとビートルズさん、スティービーワンダーさん、ジャクソン5さん、最近ではガールズバンド」といい、プロとして音楽をちゃんと聴いていることが明らかになった。
吉田氏の「BABYMETALになる前にメタルを知ってましたか」という問いには、MOAが「知ってた。お母さんがアースシェイカーのファンで「MORE」という曲から名前がついたのかもしれない。」と答え、吉田氏が「運命かもしれませんね」といい、吉田氏の「お気に入りのメタルバンドは?」という問いには、YUIが「カンニバルコープス。頭のグルグルの速さが半端ない」、MOAが「ベヒーモス。ネルガルさんの顔と声がブルータル。」と答え、吉田氏が「ブルータルってわかる?」と聞くと、MOAは「ブルータルって何?」「悪魔が出てきそうでヤバイDEATH!」というやりとりがあった。
同じ質問に対して、SU-が「アイチエネミー」と答えてしまい、「それじゃ東海地方の敵になっちゃう」と吉田氏にツッコまれる一幕もあった。
当然、この時点ではプライベートで聴く音楽は、KOBAMETALが教唆するメタルバンドではなかったのだが、SU-、YUI、MOAは、「お仕事」の一環として、また面白がりながらメタルという音楽に向き合おうとしていたのだと思う。
その姿勢は、日向坂46のメンバー4人が、『あちこちオードリー』(テレビ東京)に出演した際に、大喜利を学ぶために「ステイホーム期間にIPPONグランプリを見て勉強しました」(加藤史帆)と述べたのと同じである。
「アイドル」という立ち位置であっても、というか、だからこそ、大人たちが望む方向性―BABYMETALならメタル、日向坂46なら“笑い”―や、ファンの願望を自分なりに察知し、そこに真剣に向き合おうとする。
ヘンな女の子だと思われたくないという羞恥心や、オシャレでカワイイ「年頃の女の子」らしいセルフイメージや、「先のこと」を考える小賢しさは、要らない。
幼いながらも、そこを吹っ切った者だけが、「表現者」になれるのだ。
それがはっきりと表れたのが、2011年3月21日の「ミュ~コミプラス」だった。

●2012年4月8日
第2回アイドル横丁祭@Shibuya-AX(定員1,700)
<セトリ 3曲>
01.ド・キ・ド・キ☆モーニング
02.いいね!
03.イジメ、ダメ、ゼッタイ

アイドル横丁祭は、アイドルグッズ専門店「アイドル横丁」が主催するフェスで、第2回は「アイドル戦国時代」末期のアイドル界を俯瞰するラインナップだった。
AKB系とスターダスト=ももクロ系こそいないが、モーニング娘。=ハロプロ系の℃-uteとアップアップガールズ、avex系のSUPER☆GiRLSとCheeky Parade、インディーズ系のでんぱ組.inc、ローカルアイドルのDorothy Little Happyというラインナップの中に、アミューズ初のアイドルグループ、小中学生の「成長期限定ユニット」さくら学院の派生ユニットであるBABYMETALが入ったのだ。
しかし、先日も書いたが、この時のBABYMETALの“出囃子”は、フランスのプログレ/アンビエントバンドeRaの「Ameno」だった。ぜひYouTubeでMVを見てほしい。

https://www.youtube.com/watch?v=RkZkekS8NQU

「Ameno」とは、ラテン語の「アーメン」であり、アイドルとは無縁の宗教的な雰囲気を持ち、MVは、逆境に立たされつつも神の加護を信じて奮闘する女戦士ジャンヌ・ダルクの映像である。
あれから10年、先日の10 BABYMETAL BUDOKANの開場時BGMにも、これがかかっていた。
KOBAMETALは、確信犯的に、この曲のイメージをBABYMETALの「原点」にしていたのだ。
しかも、第2回アイドル横丁祭は、「生バンドスペシャル」というサブタイトルがついており、出演グループが生バンドを帯同していた。ところがBABYMETALはカラオケで、全身骨タイツの男たち―BABYBONE、通称骨バンド―が、バックで当てぶりをするというおふざけぶりだった。
終演後、ツイッターでは「ボーカルの子は可憐Girl‘sにいた子だよね」「やらされてる感強すぎ」「スゴイ歌唱力。サイドダンスの子もめっちゃ可愛い」「気持ち悪い」「これ、大化けするかも」といった賛否両論が渦巻いた。
アイドル史における「アイドル横丁」の意味などまったく無視した、KOBAMETALの「音楽的偏差値」の高さに驚愕するとともに、出演グループ中、最年少でありながら、集まったアイドルオタクたちの評価を二分するような「癖」の強さに、快哉を叫びたくなる。
ある意味、このライブこそ、BABYMETALの出発点なのである。
(つづく)