Another 10 Yearsベビメタ名場面(6) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月5日は、2016年、米CBS「The Late Show with Stephen Colbert」に出演し、生演奏で「ギミチョコ!」を披露した日DEATH。

<2014年(1)>
●2014年2月7日
テレビ朝日『ミュージックステーション』初出演

メジャーデビューから1年以上経って、BABYMETALはようやくテレビ朝日『ミュージックステーション』(以下、Mステ)に呼ばれた。
よく考えてみると、これは「異例」のことではないのか。
通常、新人アイドルがメジャーデビューする際には、所属事務所はある程度の経費をかけてプロモーションを行う。
雑誌媒体への露出やラジオ番組やネット番組、ローカルテレビ局、深夜枠番組に出演するのが関の山だが、タイアップCMを打つなど、告知費用さえかければ、視聴率の高い全国ネット&ゴールデンタイムの音楽番組に出演することも不可能ではない。
だが、それもキャンペーン費用が、シングルの売上によって回収できる見通しがあればこそだ。
BABYMETALも、2013年には雑誌、ラジオ、ローカル局の番組に、今では考えられないほど出演した。
だが、Mステ出演は、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のリリースから1年以上、セカンドシングル「メギツネ」リリースから半年以上も経った後であり、Mステに出たからといって、それぞれのシングルがそこからまた爆発的に売れるはずはない。
つまり、BABYMETALのMステ初出演は、「デビューキャンペーンの一環」=タイアップではなく、古風にも、Mステの制作スタッフからのオファーによるものと考えられるわけだ。
真偽はわからない。だが、NHK、TBS、日テレなどでも、BABYMETAL側がアプローチしなくても、「世界的な話題となっているBABYMETALを番組で取り上げたい」という局社員プロデューサーが現れたことを考えれば、ほぼ間違いないだろう。
しかも、収録当日、スタジオにはBABYMETALが2012年秋以来、「紙芝居」で仮想敵としてきた「巨大勢力アイドル」=全盛期のAKB48がいた。
タモリとの披露前の会話で、SU-METALは、独自のハンドサインとしてキツネサインを教え、スタジオの出演者に「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のサビでは「ダメ!」のXジャンプをしてほしいとお願いした。
仮想敵にされていることなど知らないAKB48のメンバーは、大笑いしながらキツネサインやXジャンプを面白がってやってくれた。一説には、指原莉乃だけは顔面が引きつっていたという。それが本当なら、AKB48が後から来た新人アイドルに「喰われる」という危機意識があったのだろう。
昨年末の紅白歌合戦と同じく、わずか3分にアレンジされ、神バンドの生演奏ではなくカラオケだった「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のフィニッシュ、AKB48のメンバーは「イェーイ!!!」といってキツネサインを高く掲げてくれた。2012年以降の「紙芝居」の世界観からすれば「大勝利!!」である。
これにより、BABYMETALは、国内における「巨大勢力アイドル」を仮想敵とすることから、海外のメタル嫌い&教条主義的メタルヘッズ=「先入観にとらわれた音楽ファン」を仮想敵とすることにシフトした。

●2014年3月2日
Legend Doomsday-黒い夜―@日本武道館(収容10,000人)
<セトリ15曲>
1.    BABYMETAL DEATH
2.    いいね!
3.    君とアニメが見たい
4.    おねだり大作戦
5.    4の歌
6.    No Rain No Rainbow
7.    紅月-アカツキ-
8.    Catch Me If You Can
9.    ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
10.    ギミチョコ!!
11.    悪夢の輪舞曲
12.    メギツネ
13.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
14.    ド・キ・ド・キ☆モーニング
15.    ヘドバンギャー!!
神バンド:Leda(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)

BABYMETAL史において画期となったのが、2014年3月1-2日に行われた日本武道館公演だった。
これは2012年に始まったLegendシリーズの集大成ともいえるライブであり、日本武道館史上最年少、かつメジャーデビューからわずか1年での日本武道館公演は、「アイドルとメタルの融合」をキャッチコピーとした異色アイドルBABYMETALのポテンシャルを示すことになった。
だが、BABYMETALにとってはこれがゴールではなく、文字通り出発点に過ぎなかった。
初日―赤い夜―では、セトリ終盤の「ヘドバンギャー!!」の煽りの途中でYUIMETALが花道から転落するというアクシデントがあり、暗転中、武道館には「YUIちゃーん!!」というファンの悲鳴が響いた。
だが、フィニッシュの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のイントロでスポットライトを浴びると、YUIは気丈にもクラウチングスタートの構えをとっており、それを見たSU-METALが頷き、MOAMETALはぐっと涙をこらえた。その姿を見た1万人のメイトは、改めて三人の絆の強さを目の当たりにした。
そして迎えた2日目―黒い夜―、セトリ終盤は「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が13曲目に演奏され、次はデビュー曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」であり、フィニッシュ曲は、BABYMETALの「進化・成長」を象徴する「ヘドバンギャー!!」だった。そこでステージに出現した巨大な銅鑼を鳴らした後、本人たちも、もちろんファンも予期しなかった「セレモニー」が行われた。
荘厳なシンフォニーの響く中、スクリーンには「YUIMETAL & MOAMETAL 聖誕祭 in Europe」の文字が現れる。黒い夜のサブタイトルであった「召喚の儀」とは、BABYMETALが欧米進出するということだったことを知り、ファンは狂喜した。
英語で「Scream & Dance, YUIMETAL」「Scream & Dance, MOAMETAL」「Vocal & Dance, SU-METAL」と呼び込まれると、黒いガウンをまとった三人が現れ、次々とステージ中央の棺桶の中に入っていった。
そして、三人が棺桶の中に入ると同時に、同じ棺桶の映像が映し出されたステージ上部のスクリーンが降りてくる。
「BABYMETAL、Good-By to Japan, Japan, Japan…」というナレーションと共に、その棺桶が飛翔し始め、やがて日本列島上空に達し、はるかヨーロッパを目指すところで、ライブは終了する。
現在行われている10 BABYMETAL BUDOKANと同じように、ライブと映像によるギミックが作り出したイリュージョンだった。
「…Japan, Japan, Japan…」というエコーのナレーションは、2013年1月20日に「Kawaii Girl Japan」に初出演した際の捌け際に、三人が発したセリフと同じであり、その時三人は、なぜか「ギミチョコ!」のポーズをしていた。だから、BABYMETALは、この日の「召喚の儀」をすでに「予言」していたのだという説もある。
また、前年の2013年に、先輩であるPerfumeが、順番こそ違うが、イギリス、ドイツ、フランスでのヨーロッパツアーを成功させており、BABYMETALもその「既定路線」に乗っかっただけだという説もある。
いずれにせよ、2014年3月1-2日の日本武道館公演は、多くのアイドル、アーティストにとってゴールであるのに対して、BABYMETALにとっては、「次のステップ」への通過点に過ぎなかった。
もちろん、それは「跡づけ」に過ぎない。いくら海外進出の志があっても、実際にはそうならないのが99%のアーティストだ。
しかし、BABYMETALは、世界的な話題となった「ギミチョコ!」人気を起爆剤として、本当に欧米ツアーを行い、大成功してしまった。
こうして、ぼくらは、奇跡の目撃者になったのである。

●2014年7月5日
Sonisphere Festival UK 2014@イギリスKnebworth Park(60,000人)
<セトリ5曲>
1.    BABYMETAL DEATH
2.    ギミチョコ!
3.    Catch Me If You Can
4.    メギツネ
5.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
神バンド:藤岡幹大(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、Leda(上手G)

2014年7月1日にフランス・パリ公演@La Cigale(収容954人)でのYUIMETAL聖誕祭、7月3日にドイツ・ケルン公演@Live Music Hall(収容1,500人)でのMOAMETAL聖誕祭を終えたBABYMETALは、ドーバー海峡を渡り、7月5日、イギリス・ハートフォードシャー州Knebworthで行われたSonisphere Festival 2014に出演した。
出演の経緯については、すでに何度も論考しているので触れないが、土曜日のオープニング三番手としてメインステージに立った時、イギリスのメタル専門誌『METAL HAMMER』や、ロック総合誌『Kerrang!』等で話題になっていたBABYMETALを見ようと60,000人のメタルヘッズたちが集まっていた。
現在残っているファンカム映像で見ると、スターウォーズを模して「A long time ago, in the Metal Galaxy, far, far away…」というナレーションと、日本武道館からの続きで、三つの棺桶が当地に到着する映像から始まる英語版「紙芝居」が始まったとき、観客席は熱狂的な最前列を除いて、「冷笑」「様子見」の雰囲気が強かった。
それもそのはずで、「日本のアイドルグループ」が、メタルの祭典であるSonisphereのメインステージに立つなんて「冒涜」であると考え、もしクソつまらなかったり、J-POPに過ぎないものを見せられたりしたら、ピーボトルを投げつけてやるという息巻くメタルヘッズもいた。
BABYMETAL側から言えば、リハーサルの時間はなく、サウンドチェックもそこそこでブッツケ本番というスケジュールでもあった。KOBAMETALは自ら開演前のステージでケーブル整理にあたっていた。
しかし、「BABYMETAL DEATH」が始まり、神バンドによるのけ反るほどのヘヴィなデスメタル演奏と赤いチュチュと銀色に輝く鎧型チュニックを着て踊るKawaii Japanese Girlsのミスマッチを見た観客席は、「おっ、ちょっと想像していたのと違うぞ」という雰囲気になった。
次の「ギミチョコ!」は、まさにBABYMETALを話題の中心にした曲であり、それを惜しげもなく2曲目に投入したことで、YouTubeのあの映像が、まさにリアルに演奏されるのだという衝撃を観客に与えた。間奏部でSU-がぎこちない英語で、「チェケラ!チョコレート、チョコレート、チョチョチョ、Sing!」と煽るのに対しては、まだまだ全員大合唱という感じではない。
だが、次の「Catch Me If You Can」は、Leda→藤岡幹大→BOH→青山英樹と続く神バンドの演奏力と、途中から「ハイ!ハイ!ハイ!」と入ってくる三人のKawaiさとの「融合」が本物であることを観客席に鮮やかに示した。
要するに、BABYMETALは「Fusion of Cuteness & Heavy Metal」というキャッチコピーが「本物」であることを見せつけたのである。
そして、次の「メギツネ」は、BABYMETALに思い入れのなかった観客にも、「日本から来たメタル少女戦士」という、メタルバンドで最も大切な「ユニーク」なグループのイメージを植え付けることに成功した。
日本を象徴する「サクラサクラ」のメロディがヘヴィメタルのリフに用いられ、和楽器の「♪カラリンコン…」というオカズから、YUIとMOAが狛キツネポーズを決め、続いて三人がまるで空中を浮遊しているかのような「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」という平行ダンスを始めると、観客席の中ほどまで、うねるようにジャンプするようになった。
そして、フィニッシュ曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」では、正確なピッチで地平線の彼方まで響き渡るSU-のハイトーン・クリーンボイス、ステージ上を疾走し、Kawaiくも全力で踊りまくるYUIとMOA、神バンドの超絶演奏が、60,000人のメタルヘッズの心をつかんだ。
ステージ前にはいくつものWall of Deathができ、観客がモッシュを繰り返した。
とりわけ、重要だったのは、日本語がわからないはずの観客が、下降クリシェと上昇クリシェのせめぎ合いによるコード進行=魔法の「普遍音楽文法」によって、最後には「大勝利!」となる曲の「意味」を理解したことである。こうして「We want more!We want more!」の大合唱のうちにBABYMETALの出番が終了した。
公式MVとなっている「イジメ、ダメ、ゼッタイLive at Sonisphere」には、その奇跡のような瞬間が記録されている。

https://www.youtube.com/watch?v=Ro-_cbfdrYE
「We are?」「BABYMETAL!」のコール&レスポンスの際に、SU-METALが「もっと!もっと!」といいたげに観客を手招きする笑顔、そしてユニオンジャックをまとい、「See You!」とステージを捌けていく三人の胸を張った退場シーンは、日本音楽史上、メタル音楽史上に残る名場面である。
(つづく)