10 BABYMETAL BUDOKAN考察(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月20日は過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。



2つ目の考察ポイントは、セットリスト構成である。

●共通楽曲
Ⅰ~Ⅹまで、全回必ず披露された曲は以下のとおり。

ド・キ・ド・キ☆モーニング    ⅠⅡ⑤、ⅢⅣ⑤、ⅤⅥ④、ⅦⅧ⑤、ⅨⅩ④
イジメ、ダメ、ゼッタイ        ⅠⅡ⑬、ⅢⅣ⑬、ⅤⅥ②、ⅦⅧ⑬、ⅨⅩ②
ヘドバンギャー!!            ⅠⅡ⑩、ⅢⅣ⑩、ⅤⅥ⑪、ⅦⅧ⑩、ⅨⅩ⑪
メギツネ            ⅠⅡ⑦、ⅢⅣ⑦、ⅤⅥ⑨、ⅦⅧ⑧、ⅨⅩ⑨
ギミチョコ!!            ⅠⅡ④、ⅢⅣ④、ⅤⅥ③、ⅦⅧ④、ⅨⅩ③
Road of Resistance        ⅠⅡ⑪、ⅢⅣ⑪、ⅤⅥ⑬、ⅦⅧ⑪、ⅨⅩ⑬
THE ONE            全⑫
KARATE            ⅠⅡ⑧、ⅢⅣ⑧、ⅤⅥ⑩、ⅦⅧ⑨、ⅨⅩ⑩
Distortion             ⅠⅡ②、ⅢⅣ②、ⅤⅥ⑦、ⅦⅧ②、ⅨⅩ⑦
PA PA YA!!            ⅠⅡ③、ⅢⅣ③、ⅤⅥ⑧、ⅦⅧ③、ⅨⅩ⑧

セットリストの順番は各回微妙に変わっていったが、この10曲は10 BABYMETAL BUDOKANで必ず演奏された。お気づきと思うが、これは、ベストアルバム『10 BABYMETAL YEARS』の収録曲10曲そのものである。
10 BABYMETAL BUDOKANは、10周年を振り返るライブであるとともに、『10 BABYMETAL YEARS』のお披露目ライブでもあったのだ。

●オープニング
オープニングは2パターンあった。
ⅠⅡⅢⅣとⅦⅧの6回は、「In The Name Of」~「Distortion」という流れだった。
「In the Name of」は、Legend-S-洗礼の儀@広島GAで初披露され、2018年のDarksideではこの曲がオープニングだった。また続く「Distortion」は、廃墟の街にBABYMETALが降臨するMV映像をバックにしていたから、DYSTOPIAに破壊された「緊急事態宣言」下のライブにふさわしい曲といえた。
ⅤⅥとⅨⅩの4回では、誰も予想しなかった「BABYMETAL DEATH」のリニューアルバージョン「BABYMETAL DYSTOPIA(仮称)」からの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」というパターンが行われた。
この曲は機械的な電子音で「DEATH!」「DEATH!」と繰り返しつつ、そのバックにはギターのトレモロで「BABYMETAL DEATH」の間奏部メロディが流れていた。三人はステージ外周の内側から、星型の十字架に磔にされた状態で登場する。ベビメタ体操はないが、このシーンは明らかに、かつて重要なライブの終盤に行われていたSU-METALの「死と再生の儀式」のセルフ・オマージュである。
これもまた、世界がDYSTOPIA=「作られたパンデミック」の闇に覆われる中で行われた10 BABYMETAL BUDOKANのオープニングにふさわしい曲だった。「♪キーン…」という不協和音の中、暗転すると、すぐにパイロが炎を噴き上げ、7弦ギターの重低音が「♪ズクズクズクズク…」とリフを刻み、ステージ中央にSU-MEYAL、東西の外周にMOAMETALとMOMOKOがクラウチングスタートの構えをとっていた。MOA、MOMOKOとアイコンタクトしたSU-が「♪アー…」とシャウトすると、二人が外周を走り始める。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」である。
これもまた、マスメディアによる「イジメ」=偏向報道で苦しい日常生活を強いられている者たちを解放する叫びである。
観客がつけているマスクはSavior=救世主と名づけられている。
BABYMETALは武漢ウイルスの「緊急事態宣言」下で、世界を解放する救世主として10 BABYMETAL BUDOKANに降臨した。2パターンとも、それをハッキリと指し示すオープニングだった。
これらの曲の他、2回ごとにセトリ中盤に異なる曲が演奏された。

●Ⅰ・Ⅱ
6曲目「Oh! MAJINAI」
初演…2020年1月25日Legend-METALGALAXY@幕張メッセ初日
3rdアルバム『METAL GALAXY』所収
9曲目「Starlight」
初演…2018年10月23日World Tour 2018 in JAPAN@幕張メッセ
3rdアルバム『METAL GALAXY』所収

1月19-20日のⅠⅡでは、『METAL GALAXY』所収の2曲が演奏された。
「Oh!MAJINAI」は2020年1月のLegend Metal Galaxy@幕張メッセ初日、コミカルに踊るヨアキム・ブローデンの映像とともに初披露され、汎ヨーロッパツアーで大人気となった曲である。
一方「Starlight」は、故・藤岡幹大氏に捧げる曲で、2018年10月のYUIMETAL脱退と同時に発表された悲しい思い出にもつながっているから、だいぶ意味合いは異なる。
しかし、よく考えてみると、YUIMETAL脱退が発表された2018年のJapanツアー、Dark Night CarnivalでSABATONが前座を務め、その時の縁で「Oh!MAJINAI」に映像出演してくれたのだから、この2曲は“今のBABYMETAL“に直接つながる重要曲であるといえる。
それを10 BABYMETAL BUDOKANでは最初のセトリに入れたのだ。深い。

●Ⅲ・Ⅳ
6曲目「シンコペーション」
初演…2016年8月8日Apocrypha-The White MassなんばHatch
2ndアルバム『Metal Resistance』日本盤のみ)
9曲目「From Dusk Till Dawn」
初演…2017年6月16日ハリウッドPalladium
2ndアルバム『Metal Resistance』(US盤・EU盤のみ)

2月15-16日のⅢ・Ⅳで披露された2曲はいずれも2ndアルバム『Metal Resistance』収録曲である。
だが、「シンコペーション」は日本盤のみ、「FDTD」はUS/EU盤のみに収録されている。
「シンコペーション」は国内のライブでは度々演奏されてきたが、「FDTD」は、2017年のハリウッドPalladium以来の生演奏で、国内では初披露となった。
実は「シンコペーション」も2019年のロンドン公演で海外初披露されており、これで両曲とも国内・海外の両方で披露されたことになる。つまりⅢ・Ⅳのセトリは、日本と海外の壁を超えたセトリだったといえる。
ちなみに『Metal Resistance』のUS/EU盤の「THE ONE」は英語バージョンであり、メイトなら日本盤だけでなく別バージョンとしてコレクションしておくことをお勧めする。安いし。

●Ⅴ・Ⅵ
5曲目「おねだり大作戦」
初演…2012年10月6日Legend “I”
2014年2月26日1stアルバム『BABYMETAL』所収
6曲目「紅月-アカツキ-」(新アレンジ)
初演…2012年10月6日Legend “I”
1stアルバム『BABYMETAL』所収

2月19-20日のⅤ・Ⅵでは、オープニングが「BABYMETAL DYSTOPIA(仮称)」であり、懐かしい「紙芝居」とともに、MOAがソロで小柄な4人のダンサーと共に歌い踊る「おねだり大作戦」が披露された。この曲は2012年のLegend “I”で初披露され、2014年~2015年の欧米ツアーでは、「♪買って買って買って…」のところで、欧米人ファンが手作りした「ベビメタ紙幣」が舞い散る楽しい光景が展開した。
この曲が披露されるのは2016年の東京ドームBlack Night以来だった。
YUIMETAL脱退後、BBM楽曲は“封印“されたかに見えたが、まさかの披露で、古参メイトの中には懐かしさのあまり涙する人もいたとか。
そしてLegend “I”と同じ順番で、「紅月-アカツキ-」が披露された。
ただし、10 BABYMETAL BUDOKANでは2018年のDarksideツアーで欧米人を熱狂させた丸山未那子、佃井皆美が登場し、あの“気”を発した回し蹴り&正拳突きが炸裂する殺陣が再現された。
二人のサポートダンサーは2018年のコスチュームそのままであり、観客は懐かしさとともに、あのDarksideを通り抜けて強くなったBABYMETALの歴史に改めて感動した。

●Ⅶ・Ⅷ
6曲目「BxMxC」
初演2020年1月26日Legend-METAL GALAXY二日目
3rdアルバム『METAL GALAXY』所収
7曲目「Brand New Day」
初演2020年1月25日Legend-METAL GALAXY初日
3rdアルバム『METAL GALAXY』所収

3月15-16日のⅦ・Ⅷでは、記憶にも新しい2020年Legend Metal Galaxy@幕張メッセで初披露された2曲が演じられた。
「BxMxC」は、ストリートラップ=サイファーを「メタル的」に解釈したエクストリームな楽曲であり、BABYMETAL的ラップメタルであるともいえ、ライムを踏んで歌うようにラップするSU-METALの新境地を示した。
「Brand New Day」は、シティポップないしフュージョン風の楽曲に、マスロックの雄ポリフィアのギタリスト2人を迎えつつ、これも、ポップス的にブレスを交えて歌うSU-METALの新境地を示した。
そしてこの2曲は、SU-METALのソロ曲ではなく、MOAとMOMOKOが楽曲のイメージを身体表現で伝えるダンス曲でもあった。特にMOAのダンスは「BxMxC」では狂おしく激しく、「Brand New Day」ではしなやかで豊かな表現力を見せつけた。
さらに、ステージフロアやステージ側面のスクリーンに、「BxMxC」では歌詞の日本語がモノクロで、「Brand New Day」では夜明け前の都会や自然が美しく映り込み、歌・ダンス・映像が一体化した楽曲世界を表現していた。
Ⅴ・Ⅵでオープニングが大きく変わったセットリストが「元へ戻った」という印象のあったⅦ・Ⅷは、その一方で、2021年現在、BABYMETALが到達した表現技術の極致を示していたのである。

●Ⅸ・Ⅹ
5曲目「GJ!」(MOAMETAL+4人のダンサー)
初演…2016年4月2日The SEE ARENA WEMBLEY
2ndアルバム『Metal Resistance』所収
6曲目「No Rain No Rainbow」(SU-METALソロ)
初演…2013年6月30日Legend“1999”YUI&MOA聖誕祭
2ndアルバム『Metal Resistance』所収

再びオープニングが「BABYMETAL DYSTOPIA(仮称)」~「イジメ、ダメ、ゼッタイ」になった4月14-15日のⅨ・Ⅹでは、5曲目に再びBBM楽曲の「GJ!」が披露された。
「GJ!」は「おねだり大作戦」とは違って、YUIMETALが欠席した2017年Legend-S-洗礼の儀@広島GAでも、2018年のDarksideツアーでも披露されてきた。
だが、今回は再び小柄な4人のダンサーが登場し、MOAを中心に歌い踊った。
「おねだり大作戦」も「GJ!」もKawaiくコミカルな楽曲で、BBMの二人が客席を煽る曲だが、今回はMOAが一人でそのパートを受け持ち、声の出せない日本武道館では、東西南北の客席に三々七拍子を要求し「もっともっと!」「まだまだ足りないっ!」「いいね!」と大観衆を煽りまくり、楽しさ爆発だった。
続く「NRNR」は、打って変わってSU-METALが到達した歌唱力の極致を示した。
ぼくが観たⅨでは、青い照明の中、スモークの焚かれた中央ステージに立って歌うSU-は、紫色のオーラが立ち昇る、至高の歌姫そのものだった。ピッチは一切乱れず、彼女の唇から出るフレーズの一つ一つに情感がこもっていた。
3番のはじめ、SU-はステージ北側に設置されたグランドピアノを弾き、「♪会いたい、それだけだった…」で曲が途切れ、場内は暗転した。
5,000人の観客はしわぶき一つ立てない。日本武道館は十数秒間、静寂に包まれた。
我慢できなくなった観客がまばらな拍手をした瞬間、「ワープ」したかのように、ステージ中央に戻ったSU-METALにスポットライトが当たった。「♪絶望~さえも光になる…」と歌いだした瞬間、ぼくは全身に鳥肌が立った。
ちなみに、「NRNR」がセトリに入った2021年4月14日、10公演で初めて雨が降った。
これもまた、奇跡でなくてなんであろうか。
(つづく)