だいぶ間が空いてしまったが、「教授」についても書いておこう。
1月(17日)が坂本龍一の誕生日だったし…
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YELLOW MAGIC ORCHESTRA (以下YMO)における坂本龍一の位置…主旋律(メロディ)を担うということは、サウンド・イメージの要と言って間違いではないと思う。
一方でYMOを抜きにした坂本龍一のイメージとなると、Wikiにあるような「作曲家、編曲家、ピアニスト、俳優、音楽プロデューサー」ってことになるのかも知れないが、僕にとって坂本龍一の最初のイメージは「セッション・ミュージシャン」だった。
YMOのデビューというかその存在を僕が知るほんの少し前、渡辺香津美の作品で教授の名前を知ったような覚えがある。
僕がYMOに関心を持ち始めるのは "SOLID STATE SURVIVOR" の頃… ”TECHNOPOLIS" がラジオから頻繁に流れ始めた頃だから1980年だろう。
SOLID STATE SURVIVOR/YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1980)
渡辺香津美の "KYLIN" や "KYLIN LIVE" は1979年のリリース。
KYLIN/渡辺香津美 (1979)
そのパーソネル…参加ミュージシャンの名前を見ると…
坂本龍一、増田幹夫、矢野顕子、小原礼、村上秀一、高橋ユキヒロ、ペッカー、向井滋春、本多俊之、清水靖晃…
ライヴ・アルバムでは益田幹夫と高橋ユキヒロを除くメンバーになっている。
KYLIN LIVE/渡辺香津美 (1979)
これらの作品をYMOより若干ではあるが先に知ったので、YMOのライヴに渡辺香津美と矢野顕子サポートで参加したことも含めて、YMOはFUSIONの延長上…と僕は捉えてしまった。
そして、僕にとって教授のイメージを決定づけた曲は "TECHNOPOLIS" ではなく "TONG POO" だったし、この曲の構成…中間に長い間奏(アドリブ・パート)があることも僕がYMO をFUSION的に捉えた要因だったと思う。
YELLOW MAGIC ORCHESTRA/YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1978)
僕が初めて耳にした "TONG POO" はオリジナル・ヴァージョン(USヴァージョンは吉田美奈子のヴォーカルをオーヴァーダブし "YELLOW MAGIC (TONG POO) と改題")だったし、よく聴いたのは "PUBLIC PRESSURE" のライヴ・ヴァージョンだったことも大きいだろう。
YELLOW MAGIC ORCHESTRA/YELLOW MAGIC ORCHESTRA (US:1979)
PUBLIC PRESSURE/YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1980)
"PUBLIC PRESSURE" が渡辺香津美のギターをカットせずに発表されていたら、もっとFUSION的なイメージが強くなっていた…かも。
FAKER HOLIC/YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1991)
もっとも、教授が監修したYMOのベスト・アルバム "UCYMO" (2003) で御本人は「間奏、ちょっと長いね(^^;」とライナーに書いている。
それ故か「再生YMO」のライヴ作品 "TECHNODON LIVE" (1993) ではオリジナルに近いアレンジながら間奏は短めになっている(笑)
TECHNODON LIVE/YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1993)
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"TECHNODON" で思い出したが、僕が「坂本龍一」の名前を初めて見たのはこの作品だったかも。
唐突だが、理由は後ほど…
BULLFIGHT (O.S.T)/THE LAST SHOW (1976)
TBSのテレビドラマ「火曜日のあいつ」のサントラで、泉谷しげるのバックバンドとして結成された「ラストショウ」が 1stの前にリリースした作品。
ラストショウのメンバーにはキーボードがいないので、ゲストが2人参加した形になっているのだが、それが岡田徹(ムーンライダーズ)と坂本龍一。
何故か表記は「阪本龍一」になっているが…
ジャケット裏面のクレジット部分↓
確かにピアノ、オルガン、シンセなどの音が入っている。
ただ、どれが教授の音なのか…と推測すると、オルガンとシンセかなと思う。
岡田徹はラストショウの1st "ALLIGATOR RADIO STATION" (1977) にも参加しているが、ピアノとしかクレジットされていないし、オルガンにはムーンライダースの鈴木慶一などがクレジットされている。
だから "BULLFIGHT" におけるオルガンとシンセは教授のプレイだと思う。もっとも当時はまだ無名の新人(24歳?)だったそうだが。
その後、大瀧詠一、山下達郎、大貫妙子などの作品に関わっていったことを僕が知るのはYMOが世界的な人気を得てからのこと。
余談ではあるが「火曜日のあいつ」は遂にDVD化が決定♪
逆にラストショウのギタリスト、Dr.k こと徳武弘文が「guiters:Hirofumi Tokutake」 と "TECHNODON" にクレジットされているのを見て「!」驚いた覚えがある。
TECHNODON/YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1993)
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坂本龍一の「セッション・ミュージシャン」というイメージは当時のソロ・アルバムがFUSION的な印象だった…いや明確に区分などないのがFUSIONだとは思うけど。
THOUSAND KNIVES (1978)
ファースト・ソロの "THOUSAND KNIVES" はYMO結成時期の作品とはいえ、渡辺香津美も所属したコロムビアのレーベル Better Days からのリリースだったし、続く作品は "カクトウギ・セッション" という名義でジャズとロックのミュージシャン(いや、明確な区別があるとは思わないけど)入り乱れで制作されている。
SUMMER NERVES/坂本龍一&ザ・カクトウギ・セッション (1979)
もちろんYMOのような(YMOでも演奏した)楽曲もあったりするが、もっと多彩な要素を含むサウンドだった。
アルバム "B-2 UNIT" やシングルの "WAR HEAD"になるとテクノ以上に実験的な要素が顕著になっていく。
b-2 UNIT (1980)
そして映画 "戦場のメリークリスマス" (1983) や "ラストエンペラー" (1987)の音楽を担当(出演も)したことで、世界的に「音楽家」のイメージが広まることになった…のかな。
戦場のメリークリスマス - O.S.T (1983)
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教授の根底にクラシックがあるとはいえ、幅広い音楽性を持っていたからこそセッション・ミュージシャンとして活動できたのだろうし、YMO以上にポップな側面も多く持ち合わせていたと思う。
それは楽曲提供やアレンジ担当などで残されているが、そのサンプルとして面白かったCDがある。
イエローマジック歌謡曲/Various (2005)
YMOの3人が関わった楽曲を集めた3枚組CD。ただ、内容を見ると圧倒的に細野晴臣の比率が高い。
まあ、中森明菜と松田聖子の両人に楽曲提供した方は…他にいないような気がするが…(;^_^A
なにしろ別途、細野さんの仕事をまとめた6枚組CDが存在するようだし。
教授の場合、この中を見ただけだが楽曲提供(作曲)よりはアレンジ(編曲)での参加が多い印象を受けた。
このCDにも収録された中で、作曲まで担当した作品で「超個人的」に印象深いのはコレ。
さよなら、こんにちは/伊藤つかさ (1982)
"恋はルンルン"(アルバム収録曲)
作詞:仲畑貴志、作編曲:坂本龍一。
シンセの音色が教授らしいと言えばらしいと思う。
そもそもこのアルバムYMO関係者が参加していて、楽曲提供では教授をはじめ矢野顕子に高橋幸宏、アレンジで大村憲司の名前がクレジットされている。
さらには楽曲提供では安井かずみ&加藤和彦、大貫妙子、原由子。アレンジに後藤次利、清水信之というメンバー。
1982年だからYMOが "BGM" と "TECHNODELIC" を作った後になる。この翌年には "胸キュン” を発表するわけで(笑)
そういえば、この時期の大貫妙子作品の編曲も数多かった。
大貫妙子の楽曲で "イエローマジック歌謡曲" に収録されていたのはコレ1曲だったが。
もう1曲、"イエローマジック歌謡曲" 収録で教授の幅の広さを感じられる曲がコレ。
KIYOSHI/前川清 (1982)
"雪列車"
作詞:糸井重里、作編曲:坂本龍一。
シングルで発表された楽曲らしく "イエローマジック歌謡曲" の曲目リストにもシングルの品番がクレジットされていた(いや、ライナーをちゃんと隅から隅まで読んでいなかった)ので、この曲を含む「アルバム」が存在することをこのCDの入手時にはわかっていなかった。
アルバム "KIYOSHI" の存在を知ったのはブログで長年お付き合いのある方が教授が亡くなった際にアップした記事だった。
その記事を見た直後、僕は運良く "KIYOSHI" の中古CDを適価で入手できたのだが、これが教授の一面を知る好適な音源になった。
アルバム "KIYOSHI" は前川清がまだクールファイブ在籍だった時期に制作した1stソロアルバム。プロデュースは水谷公生。
僕にとって興味深いのは伊藤つかさのアルバムと同じ時期に制作されているということもあるが、レコーディング参加者のクレジットを見ると、ドラムに青山純、山木秀夫、渡嘉敷祐一。ベースに後藤次利。ギターに水谷公生、松原正樹。キーボードに佐藤準、清水信之、坂本龍一、松武秀樹…などなど。
楽曲提供やアレンジに参加のクレジットを加えると、糸井重里、伊勢正三、佐藤準、安井かずみ&加藤和彦、矢野顕子、鈴木茂、山川啓介…
所謂「クレジット買い」じゃないが、このメンバーだけでも興味を持たれるかたはそれなりにいらっしゃるのではないかと。
なにより、”雪列車" ではドラム、ベースにキーボードを教授が演奏でクレジットされている。
クールファイブのような「ムード歌謡」要素は持ちつつも、モダンなサウンドで味付けした…それは現在で言うところの「シティ・ポップ」な要素も持った作品と言えるかな…というのが僕の感想。
そもそも「内山田洋とクールファイブ」って、ムード歌謡のコーラス・グループではなく、所謂「セルフ・コンテインド・グループ」というか、「バンド」だったわけで。
そのような視点から見れば "雪列車" は "冬のリビエラ(森進一)” や "熱き心に(小林旭)" などと同列に語られてもいいんじゃないかと思う。
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作編曲以上の「コラボ」な代表作は…
…やっぱりこれでしょうね。
そして…今、これを持ち出すのはいろいろ言われそうだが…
…これはこれで衝撃的だったな(笑)
確か…教授は「大阪弁のラップは面白い」という趣旨の発言をしていたと僕は記憶しているのだが…
コラボと言えば、こんな曲もあった。
TOKYO-PARIS-LONDON-NEW YORK - DANCING NIGHT
/VARIOUS (1982:12inch)
この企画物12インチ盤に "Lyuichi-Kazumi" 名義で発表された Bryan Ferry のカヴァー。後に坂本龍一と渡辺香津美の共演作品を集めたコンピ盤 "TOKYO JOE" に収録された。
TOKYO JOE/坂本龍一 渡辺香津美 (1982)
聞けばわかるが、ドラムと途中からのヴォーカルは高橋幸宏♪
そして、最も画期的な「コラボ」はこれかもしれない。
1985年にシングル盤で発売された曲だが、その後にCD化されたことは一度もなかった。
しかし、昨年末にリリースされた松任谷由実の変則コラボ・ベスト "YUMING KANPAI!!" に収録され、これで遂に初CD化となった。
YUMING KANPAI!!/松任谷由実 (2023)
松任谷由実、小田和正、財津和夫のコラボに加え、演奏が高橋幸宏、後藤次利、高中正義、坂本龍一(編曲も担当)という「ドリーム・チーム」な布陣で制作された音源。
しかも、シングル盤B面の "Another Version" (坂本龍一のピアノに3人のヴォーカル)が、11曲目にシークレット・トラックとして収録された。
しかし、この曲を同じメンバーで生演奏することはもう叶わない。
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なんとも久々(でもないか…)に長尺記事になってしまったが、「教授」…坂本龍一とその周辺に対する僕の印象を書くにはこれだけの尺が必要だった…というか、書いているうちに纏まりがつかなくなったというか…
(;^_^A
ただ、教授を「音楽家」と称することは間違いではないと思うが、山下達郎が自身を「アーティスト=芸術家」ではなく「芸人」と表現するように、教授は
「音楽家」と呼ばれることをどう思っていたのか…という勝手な疑問があっていろいろと詰め込み過ぎました…<(_ _)>
僕の個人的な思いでは、このアルバムのタイトルが教授の呼称に似つかわしいのかな…と思っている。
未来派野郎 (1986)
そして、この記事のタイトルに "TONG POO" を選んだ理由…僕の印象だけでなく、YMOの楽曲でアレンジのヴァリエーションがこれほど多い曲はないと思ったからだ。
このヴォーカル・ヴァージョンも含めて。