2024年も2月になったけれど、去年の話を…
M.R.I_ミライ/かつしかトリオ (2023)
2023年の日本のFUISONは注目に値する話題が多かった。
まずは櫻井哲夫、向谷実、神保彰による「かつしかトリオ」
野呂一生を除いた元CASIOPEAの3人…確かにそうではあるが、「神保彰ワンマンオーケストラ」にゲストで櫻井哲夫、もしくは向谷実を迎えたことがあり、いずれも好評だったので3人でライヴを行った…それが結成のきっかけになったとか。
そのライヴの会場が「かつしかシンフォニーホール」だったことから「かつしかトリオ」という名前を冠したとのこと。
ライヴ活動だけかと思っていたら、7月に新曲を配信、10月にアルバム発表と本格的に楽曲制作も行うようになった。
比較するのは野暮ではあるが、CASIOPEA との最大の違いは楽曲が全て3人の共作になっていること。
そして既に2作目のアルバム制作が決定したらしいので、今後の活動が楽しみになった。
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本家の CASIOPEA は…と言えば、2022年に神保彰がサポートを卒業したため、新たなドラマー今井義頼が正式(現TRIXの熊谷徳明以来)加入。バンド名も CASIOPEA-P4 となり2022年12月のライヴをビデオ(Blu-ray)とCDで2023年春に発売。
NEW BEGINNING LIVE CD/CASIOPEA-P4 (2023)
スタジオ作 "NEW TOPICS" (2022) に続くアルバムは早速ライヴといったところか。
今井義頼がライヴでどんなプレイをするドラマーかは、配信ではあるが Rie a.k.a. Suzaku のライヴでも観たので、なんとなく芸風は掴めた気がする。
神保彰と比べると…僕は「ワイルド」な印象を受けたが、このリズム隊による CASOPEA-P4 で、どんな新作が出来るのか楽しみだ。
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神保彰と言えば、もうひとつ…
PYRAMID 5/PYRAMID (2022)
鳥山雄司、神保彰、和泉宏隆の3人で結成された PYRAMID の新作。
5年ぶりのアルバムだが、2021年に和泉宏隆が亡くなったことで活動がどうなるかと思っていたら、クラウドファンディングでアルバム制作資金を募る旨が発表され、2022年10月にリリースとなったのだがCDはクラウドファンディング参加者限定で一般向けには配信のみで発売された。
内容的には王道FUSIONの発展形なスタイルは継承されつつ新たな試みを加えた作風なので過去の作品が好きなら間違いなく気に入ると思う。
1年前のリリースだが、2023年11月にLPとしても発売された。
制作過程からすればCDが一般販売されなかったことは分からなくはないが、アナログ盤ブームに全く関心がない立場からすると「わだかまりの残る」作品になってしまった。
まあ、YouTubeで全曲視聴できるのだが…
鳥山雄司は2023年から山下達郎バンド(佐橋佳幸の後任)に参加、神保彰は先の「かつしかトリオ」、そしてそれぞれにソロ活動もあるだろうから PYRAMID としての活動が現状以上に活発化するとは考えにくいが…継続することには期待したい。
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「かつしか」だけなく「アカサカ」も…
FIRST EDITION LIVE/AKASAKA TRIO (2023)
2021年に T-SQAURE を「退団」した安藤正容と1980年代後半から90年代の T-SQUARE リズム隊、須藤満&則竹裕之によるトリオ…バンド名といいメンバー構成といい「かつしか」に似た「再集結」感がなくもないが、リズム隊2人の「35周年セッション」に安藤正容が参加したことで偶発的に結成に至ったらしいから、こちらも「再集結」とは言えないだろう。
バンド名はこのアルバムの発売元であり収録場所の MZES TOKYO の所在地が由来…なのだと思う。そのあたりも「かつしか」に似てるような…
T-SQUARE と違うのはメロディを受け持つのは当然ギターになる(時々ベースもあるが)
でも、同期音源も使っているのでサウンドが薄くなる感じはそれほどない。
どうあれ、安藤正容がのびのひとギターを弾いている…そんな印象だ。
そして、サックスやEWIがあってこそ T-SQUARE のサウンドになる…そんな当たり前のことに改めて気付く。
ただ、今のところ「新曲」が制作されるような情報は…僕は得ていない。
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「本家」 T-SQUARE は…2022年12月31のライヴをビデオでリリース。
WELCOME BACK! MASATO HONDA/T-SQUARE alpha X (2023)
安藤正容の退団後は T-SQUARE alpha を名乗っているが、このライヴでは DOUBLE SAX の "X" を付記している。
タイトルやジャケットの通り2代目サックス奏者の本田雅人が参加、更には河野啓三や宮崎隆睦も加わるというスペシャルな編成。
2023年がデビュー45周年なので、その予告編だった…のかどうかは知らないが、毎年最低1枚のインターバル通りリリースされた通算50枚目のオリジナル・アルバムはスペシャルな内容だった。
しあわせの風~VIENTO DE FELICIDADE/T-SQUARE (2023)
事あるごとに過去のメンバー再集結的なライヴやアルバム制作は行われてきたが、ここでは alpha になってからのサポート・メンバーに加え、長谷部徹、則竹裕之、安藤正容、須藤満、河野啓三、本田雅人、仙波清彦、宮崎隆睦、久米大作、田中豊雪という過去メンバーだけでなく、鳥山雄司や渡辺香津美も参加するという豪華なセッションになった。
2000年に一度は実質的に解散した T-SQUARE ではあるが、安藤正容の退団時に解散しなかったのは、長年で築かれた大きな人脈あればこそなのだろう。
正直なところ、安藤正容の抜けたバンドを "SQUARE" と呼べるのかと思ったし、alpha になってからのアルバムに何か物足りなさを感じたのも事実。
でも5年後、50周年を迎える時にはどうなっているか…そんな興味も湧いてくるから不思議。1年1枚のペースを守っていけば、その時には5枚のアルバムが加わっているはずだし。
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1年1枚といえば、こちらのバンドも…
PARADE/TRIX (2023)
元 T-SQUARE のベース須藤満と 元 CASIOPEA のドラマー熊谷徳明が組んだことが話題になって…え? もう20年!?
1stアルバム "INDEX" が2004年だから2024年は20th Anniversary ということになる。TRIX もすっかりベテランの領域に入っていたわけだ。
ただ、この作品についてはスペシャルな要素がある。
バンドの歴史で初めてのメンバーチェンジ…ギターに菰口雄矢が加入した時期、2013年に "Re:TRIX" という当時のメンバーによる過去曲カヴァー・アルバムをリリースしたことがあるが、"PAREDE" は新作と過去曲カヴァーのCD2枚組という体裁。
セルフ・カヴァーを作品化するのは10年ぶり2度目。
現在のメンバーによる自信の表れなのか、来たるバンド20周年を意識したものなのか…それとも全く関係ないのか(笑)
まあ、何かの節目であることは間違いないのだろう。
そして、テクニカルな聞かせどころを持ちながら、どこかスッとぼけた TRIX の芸風(個人の感想です)はデビューから20年を経ても変わらなかったことを確認できたのは大きな収穫かも。
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去年、僕が注目したのはベテランばかりではなく…
THE JAZZ AVENGERS/THE JAZZ AVENGERS (2023)
ドラマー川口千里を中心に結成されたバンドで、ギター、キーボード、ベース、ドラムという所謂「フォー・リズム」にサックス4管(ソプラノ+アルト×2+テナー)という全員女性による8人編成。
ガールズ・バンドということを抜きにしてもユニークな編成だと思う。
川口千里は…このブログの常連なら御存知だろうが、僕が佐藤奏というドラマーを知る流れの中で認識したドラマーだ。
そういえば、MUSES のライヴで観客に「腕振りを指示」した曲(Galactic Gypsy)があったが、"Buena Vista" のパフォーマンスが元ネタ(?)だったりするのかな(笑)
閑話休題…(;^_^A
川口千里…彼女は「手数王」と呼ばれた菅沼孝三の門下生(「手数姫」とも呼ばれたらしい)であるだけでなく、フェイヴァリット・ドラマーが Ian Paice (DEEP PURPLE) と知って僕の関心は倍増。
そんな彼女の初ソロ・アルバム "A LA MODE " がリリースされたのは2013年だから、もう10年前で彼女がまだ高校生の頃…
その後…CASIOPEA (3RD~P4) のキーボード大高清美との「KIYO*SEN」(2014~)の活動もあって、FUSION の中でもテクニカルでかつハード・ロックやプログレッシヴ・ロックなセンスの持ち主かと思っていた。
しかし、新しいバンドは "THE JAZZ AVENGERS" と名乗っているけれどサウンドは JAZZ より FUSION と言っていい内容だったことに…驚きはしなかったけれど、面白いと思う感情が大幅アップ。
ま、ジャンル分けなんてそんなものだとは、常に思っていますけど。
そんな THE JAZZ AVENEGRS 、まもなくライヴ映像作品がリリースの予定。
もちろん予約済(笑)
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そして「言うまでもなく」 MUSES も順調に 2nd アルバムを発表。
GODDESS OF VICTORY/MUSES (2023)
こちらは既に記事で採り上げたので、ここでアルバムそのものについては語らないでおく。
231030 GODDESS OF VICTORY/MUSES
ただ、ギタリストの Rie a.k.a. Suzaku が2024年はソロ・アルバムを制作するので MUSES としての新作はしばらくなさそう。
一方、ドラマーの佐藤奏は昨年インド・ツアーをサポートした KOIAI に正式加入したそうだ。
FUSION の系列ではないし、KOIAI というユニットがどんなサウンドなのかは、まだ数曲しか耳にしていないのであまり把握していないのだが、「ツインギター」というのはかなり気になるポイントだ。
このように僕にとって注目点の多かった2023年。
2024年はどんなサウンドに出会えるか。そしてその先の未来には…
とりあえず、目先の楽しみはこれ。
このメンバーのセッション、これで4回目…♪